エレファントカシマシの『昇れる太陽』が売れまくっている理由

エレファントカシマシの新作『昇れる太陽』が売れまくっている。とはいってもamazonのランキング(amazonでは初回限定盤が一時的に品切れになっていた)とオリコンのデイリーチャート(2位→3位→4位と推移)を見ている限りなので、オリコンの週間の売上実数を見てみないと何ともいえませんが少なくともここ数作のエレファントカシマシのアルバムの中でも好セールスである事は間違いないと思います。
という事で、エレファントカシマシ『昇れる太陽』をご紹介。通算19枚目のアルバム(ミニアルバムDEAD OR ALIVEを除くと18枚目)になる『昇れる太陽』はタイアップが付いたシングル群が収録されている事もあり、世間的にもある程度話題にはなっていたのですが、その反面シングルのカップリング等も収録されている為、11曲の収録曲中に新曲といえる曲が6曲しか収録されておらず少々複雑な心境ではありました。がしかし、その心配は全くもって杞憂に終わる作品となっておりました。正直なところ、既発のシングル曲の中で前作『STARTING OVER』に収録の「笑顔の未来へ」のインパクトを超える曲は無かったのですが、アルバムで通して聞くと非常に意味合いが変わってきました。というのも新曲の6曲の中にはインパクトのある楽曲というか、宮本浩次の本質が見えるロックチューンが含まれていたからでして、その辺をご紹介していきたいと思います。まず、アルバムの冒頭を飾る「Sky is blue」から明らかに今までエレファントカシマシとは傾向の異なる楽曲で、BeckLoserを思わせる様なスライドギターが印象的な一曲。 「おかみさん」はこれはもう完全にLed Zeppelinへのエレファントカシマシ流のオマージュで「Heartbreaker」から始まり「Whole Lotta Love」「Communication Breakdown」も出てくるわで渋谷陽一社長が膝を叩いて喜んじゃうような出来。「ジョニーの彷徨」は打ち込みを多用したジョニーシリーズの続編。「あの風のように」「ネヴァーエンディングストーリー」は実にフラットなエレファントカシマシを体現したスケールのあるミドルテンポの楽曲で、宮本浩次のボーカルの艶も楽しめる良曲になっています。そして、CMの曲として書き下ろされた「ハナウタ〜遠い昔からの物語〜」がいわゆるエレファントカシマシの歌モノ路線を極めた様な楽曲で、歌に重きを置いた事でベクトルは逆ながらも振り切れた名曲となっています。これらの楽曲がスケールの大きなシングル曲と上手く調和を取って絶妙の並びで配置されていますので、アルバムとして非常にバランスが良い出来になったといえると思います。
『昇れる太陽』というアルバムが名作になり得たのはシングル曲以外の楽曲の良さ、特にサウンド面での面白みがあったからだと思いますし、その事がシングル曲やカップリング曲の良さを引き出していると思います。恐らくレコード会社的にはシングル曲の路線を推し進めた様な作品を期待したと思うのですが、その辺に逆らいながらも結果としてコマーシャルなアルバムに仕上げてきたのは非常に評価出来ると思いますし、本当の意味でエレファントカシマシが昇りつめた充実期の作品になったと思います。まだまだエレファントカシマシは健在どころか昇り続けている事が嬉しい。

追伸
・発売前のTOKYO FMでのDJ鈴木万由香さんとのプロレス的な騒動も、結果的に良いアルバムの宣伝になった様でメデタシメデタシ。
ミュージックマガジンで宮本の声に張りが無いとか「演歌」っぽいとか書いていたライター岡村詩野さんのレビューの的が外れていてヨカッタヨカッタ。

昇れる太陽を遮るデカ過ぎるグラサンが素敵。

昇れる太陽(初回限定盤)(DVD付)

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ハナウタ〜遠い昔からの物語〜