The Viewの『Cutting Corners EP』で考えさせられたフォーマット

The View『Cutting Corners EP』を聞いています。
『Cutting Corners EP』はアルバム『Bread & Circuses』Viewらしいギターサウンドを聞かせてくれていた「Sunday」を中心とした全5曲入りのEP。他の収録曲のうち「Happy」はアルバムに収録されていますので3曲が新曲という扱いです。とはいっても「Sunday (Tim Hutton mix)」というリミックスも収録されており、実質「Sideways」「Alone」という2曲が新曲になります。メランコリックな「Sideways」とドラマティックに展開していく「Alone」ともにアルバムに収録されていても不思議でない仕上がりで、現在のThe Viewの好調さを感じる事が出来る佳曲になっています。
とまあ『Cutting Corners EP』の内容に関してはそれほど書く事は無いのですが、問題はこのEPというスタイルを取ったCDシングル。正直なところ、昨年辺りからシングルCDをほとんど買わなくなってしまった(というより販売数自体が一気に減った為、購入の機会自体が減った。)自分が久し振りに購入した洋楽のCDシングルになります。アーティスト側も今までのシングルCDというフォーマットには別れを告げ、フリーダウンロード、ダウンロード限定での販売、7インチアナログでの限定発売などの方法を取るようになり、アルバム自体もアーティストのオフィシャルサイトによる直販やPledge Music(リスナーがアルバム製作に投資する形式)など販売方法が多様化しており、ここ数年のうちにフォーマットや作品をリスナーに届ける手段の変化は加速してきた様に思います。また今まではシングルのカップリングで収録されていただろう楽曲は、アウトテイク集としてまとめて発表されたり、iTunesのボーナストラックなど何らかのボーナスマテリアルとして発表されたりと、アルバムに洩れたトラックの発表方法も変化を遂げているように思います。少し前までのアーティスト(特にUK)はCD1、CD2、そして7インチとそれぞれにカップリング曲を変える事で、リスナーの収集欲を刺激する販売手法を取っていたと思うのですが、現在そのようなフォーマットで販売しているアーティストはほとんどいなくなってしまいました。今回の『Cutting Corners EP』も以前ならシングルCDのカップリングが「Sideways」「Alone」そして7インチのカップリングが「Sunday (Tim Hutton mix)」だったはずです。「Sunday (Tim Hutton mix)」なんて脱力感あるトホホな仕上がりなのですが、90年代以降のシングルのカップリングにはトホホなダンスリミックスは必須でしたし、そんなトラックでもそれなりに楽しめるものだったことも、今となっては遠い昔の事の様に感じてしまいます。
とまあ長々と書きましたが、『Cutting Corners EP』は内容とは違う部分で非常に考えさせられるCDになりました。恐らくこうしたEPの類もあっという間に姿も消していくでしょうし、もしかすると自分が買った最後のCDシングル(EP)になるかもしれません。そしてCD自体がどんどんニッチなモノになるのだと思います。モノを持つというステータスから、モノを持たないスマートさこそがステータスという時代の変化。膨らみすぎた音楽産業のスリム化という意味では、正常な姿に近づいているのかもしれません。でもやっぱりシングルのカップリングというポジションで語られていた隠れた名曲が行き場をを失ったり、トホホなリミックスが聞けなくなってしまうのは寂しい。

Cutting Corners Ep

Cutting Corners Ep