The Young Veinsの『Take A Vacation!』がレイドバックし過ぎた理由

Panic! at the Discoの中心人物だったRyan RossJon Walkerが、バンド脱退後に結成したのがこのThe Young Veinsというバンド。デビューアルバム『Take A Vacation!』では興味深いサウンドの変化を聞かせてくれているのでご紹介したいと思います。
Panic! at the Discoはご存知の通り、Fall Out BoyPete Wentzにデモテープを送った事できっかけでデビューを果し、サウンド自体もその影響下にあったデビュー作『A Fever You Can't Sweat Out』がヒットした事で一躍有名になりました。その後、サウンド的に60年代のサウンドに大胆にシフトチェンジしたセカンドアルバム『Pretty. Odd.』が更なる大成功を収め、一気にトップバンドに登りつめ、そのキャリアは順風満帆かと思われたのですが、メインソングライターであるRyan RossとベースのJon Walkerが音楽性の違いを理由に脱退。『Pretty. Odd.』からバンドに加入したJon Walkerにはソングライティングの能力があり、Ryan Rossとよほどウマが合ったのではないかと思います。その後ボーカルのBrendon UriePanic! at the Discoを継続させる事を発表した為に、Panic! at the Discoは分裂状態になってしまいました。そんな二人が結成したThe Young Veinsは、『Pretty. Odd.』サウンドを更にレイドバックさせた様な完全に60年代志向の『Take A Vacation!』を作り上げて再デビューを果すという事になりました。Ryan RossPanic! at the Discoでも大部分の楽曲のソングライティングを手掛けていただけあって、『Take A Vacation!』にも飾り気の無いシンプルなグッドメロディが詰め込まれており、その辺の新人バンドとは一線を画す仕上がりになっています。一曲目の「Change」からバンドの出発としてはピッタリの力強いサウンドで、続く「Take a Vacation!」Beach Boys直系のポップソング、他にもBeatlesの影響が色濃く出たというかモロ「Please Please Me」なフレーズが飛び込んでくる「Cape Town」や、「Maybe I Will, Maybe I Won't」などのメロディは印象的で、アルバム前半に展開されるメロディには多くの人の耳を奪うだけの力はあるのではないかと思います。
『Take A Vacation!』がレコーディングされた時点では、Ryan RossJon Walker以外のメンバーが固定化されていなかった様(その後3人が加入し現在は5人組。キーボードにはTilly and the WallNick Whiteを迎えている。)で、『Take A Vacation!』自体は彼らの人脈を活かしたメンバーによってレコーディングされており、Phantom PlanetAlex GreenwaldRilo KileyJason BoeselThe LikeZ Berg等も参加しています。この辺の経緯やまんまBeach Boysなジャケットやそのアルバムタイトルからもも分かる通り『Take A Vacation!』はリラックスした状態で作られたのだと思いますし、作品自体にも力みは一切感じられません。その事自体は素晴らしい事なのですが、あまりにもそのままのサウンドの為、面白みはあまり感じないですし、懐古主義的なバンドという枠をはみ出すほどの魅力を打ち出していかないと、新たなリスナーを獲得していく事は困難の様にも思います。とはいってもデビュー作としては合格点をクリアした全11曲29分の良質なポップソング集。興味のある方はぜひどうぞ。

Take a Vacation!

Take a Vacation!

力強さを増したThe Zombies風。