Gomezが『Whatever's on Your Mind』で辿り着いた桃源郷ポップス

Gomezの7枚目のアルバム『Whatever's on Your Mind』を聞いています。
Gomezは1997年にデビューを果たしていますので、すでにベテランバンドの域に達しているといえると思います。そんなGomezのニューアルバム『Whatever's on Your Mind』は、ベテランバンドらしからぬ瑞々しさに満ちた非常に素晴らしい作品になっていました。前作『A New Tide』は当ブログで取り上げた様に、程好いポップさもあって、非常にバランスが取れた良作だったのですが、今作では更にポップさが増したサウンドに仕上がっています。アルバムの冒頭を飾る「Options」は先行で配信されていた曲ですが、軽快なアコースティックギターで幕を開けた後に、ホーンやGomezの魅力である美しいコーラスワークが重なり合ってくる見事なポップソングに仕上がっており、『Whatever's on Your Mind』全体のサウンドを象徴しています。続く2曲目の「I Will Take You There」Supergrass「Pumping on Your Stereo」を髣髴とさせるブリティシュなメロディにアーシーなテイストを加えたポップソング。タイトルトラックの「Whatever's On Your Mind」と次曲の「Just As Lost As You」は広がりのある大陸的なサウンドとブルージーさに柔らかさが加わったGomezらしい楽曲、続く「The Place And The People」もクラシカルなポップソングの魅力を詰め込んだ、鍵盤の音色が印象に残る楽曲。
とまあアルバム前半から次々と繰り出される陽性のポップワールドは、今までのGomezには無かった新境地だと思います。そしてアルバム中盤から後半にかけてもGomezは更に様々なタイプの楽曲を聞かせてくれています。「Our Goodbye」はストリングスと女性コーラス(Stephanie Farrar)を効果的に使ったアルバム随一のバラードだし、「Song In My Heart」も静かなイントロから電子的な響きや打楽器が加わり、様々な楽器が飛び込んできながらサウンドが徐々に広がっていく開放感が素晴らしい楽曲、「Equalize」Cakeの様なファンクさがあるブルーズポップ、「That Wolf」も基本的にはアーシーですが楽曲の展開の面白さとメロディのポップさが混じり合った楽曲、「X-Rays」はアルバム一のドラマティックな展開を見せながら最終的にポップなメロディに辿り着くという『Whatever's on Your Mind』というアルバムの最終曲にふさわしい楽曲。
この様に『Whatever's on Your Mind』サウンドに幅を持たせているものの、統一感を持った仕上がりになっており、単純で薄っぺらなポップさではなく様々なサウンドを上手く溶け込ませながら深みを持たせる事に成功した楽曲群は本当に素晴らしいと思います。もちろんこれは、今作をプロデュースしたPhantom PlanetSam Farrarの手腕(ちなみに前述したStephanie Farrarは彼の奥様ですね)と相性の良さもあるでしょうし、何より前作『A New Tide』からのポップ路線を突き詰めながらもGomezが自分達らしさを失わなかった事が、『Whatever's on Your Mind』を傑作へと導いた大きな要因なのではないかと思います。『Whatever's on Your Mind』の様に軽快なアコースティックフォークアルバムでもあり、深みのある渋さとポップさを兼ね備えた様な作品には中々出会う事が出来ない。全10曲37分。桃源郷の様なポップミュージック。

Whatevers on Your Mind

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