Brian Wilsonが『Brian Wilson Reimagines Gershwin』で聴かせるポップクラシック

2010年はBrian Wilsonチルドレンの作品も多く見られたので、その辺の書き漏らしているレビューを続けて書けたらなと思っています。という事で、まず最初はBrian Wilson御大のBrian Wilson Reimagines Gershwin』のレビューから。
George Gershwinといえばポピュラーミュージックからクラシック、ジャズに渡り多くの音楽の礎となった作曲家ですので、その作品をBrian Wilsonがカバーするという事で悪いアルバムになる訳がありません。耳馴染みのある楽曲が、Brian Wilsonによって息を吹き込まれており、今までに様々なミュージシャンによってカバーされてきたクラシックやジャズに偏ったアプローチではなく、完全なるBrian Wilson流のポップソングに仕上がっているのが印象的です。どこをどう聞いてもBrian Wilsonサウンドに満ち溢れたBrian Wilson Reimagines Gershwin』は、カバーアルバムとはいえ一連のBrian Wilsonのソロアルバムの系譜にある作品である事は間違いなく、『SMiLE』から続くBrian Wilsonのライフワークの一部として大きな魅力を放っています。
Brian Wilson Reimagines Gershwin』にはカバー曲だけでなく、未完だったGeorge Gershwinの作品を引き継ぐ形でBrian Wilsonが完成させた楽曲であるThe Like In I Love You」「Nothing But Love」という楽曲も収録されてアルバムの中に違和感無く収まっており、二人の天才の共演は当たり前の様に通じ合ったサウンドとして収録されています。また、Brian Wilsonのボーカルも全体を通していつも以上に優しげに感じ、包み込むようなコーラスワークと重なり合い冴えを見せており、クラシカルなボーカルアルバムとしても十分に楽しめる仕上がりな事も素晴らしいし、68歳という年齢を感じさせない瑞々しい声を保ちつづけている事に改めて感動してしまいます。
もとよりGeorge Gershwinを敬愛していたBrian Wilsonですので、今回の作品は極自然な流れの中で生まれたものなのですが、Brian Wilsonが目指しているクラシックなポップミュージックのフォーマットというか、お手本の様な存在がGeorge Gershwinである事がはっきり分かる仕上がりになっており、Brian Wilson Reimagines Gershwin』Brian Wilsonのルーツを炙り出す上で非常に重要な作品に仕上がっているのではないかと思います。
Brian Wilson Reimagines Gershwin』に収録の楽曲中で、個人的に思い入れが強いバージョンはHelen MerrillClifford Brownとの共演が素晴らしい「'S Wonderful」Ella FitzgeraldLouis Armstrong「Summertime」。ベタベタですがこの辺はジャズボーカルの入門曲としても聴きやすいかと思います。


Brian Wilson Reimagines Gershwin

Brian Wilson Reimagines Gershwin


聞き比べてみるのも乙。