Magic Kidsが『Memphis』でかけた濃縮マジック

季節外れの夏らしいCDが続きます。という事でMagic Kids『Memphis』というアルバムのご紹介。
先日ご紹介したThe Young Veinsよりもダイレクトな形でBeach Boysの系譜にあるのがこのMagic Kidsというバンドで、バンド名や曲名、その音楽性といい非常に分かり易いバンドだと思います。柔らかなボーカルと甘いメロディにコーラスワークが、これでもかというぐらい次々に登場してくるのが『Memphis』というデビューアルバムで、この辺のサウンドを好む人にはドンピシャなバンドだといえると思います。特に「Hey Boy」なんて楽曲は2分15秒の間にポップセンスがギュッと濃縮された好トラックだと思うし、11曲29分で2分台の曲がほとんどである『Memphis』というアルバムの濃度は濃いものに仕上がっています。『Memphis』サウンド自体には様々な趣向がさり気無く凝らされている事から分かる様に、音楽脳が非常に高いバンドだと思うのですが、アルバムを聞き終えた時にそれを感じさせずに、あくまでもシンプルなサウンドとメロディが印象に残るのは、Magic Kidsの持つ最大の魅力だと思うし、伊達にMagic Kidsを名乗ってはいないなと感じます。
ちなみにMagic Kidsの前身バンドであるThe Barbarasはメンフィス繋がりで、Jay Reatardプロデュースによってレコーディングまで予定されていたのですが、そのJay ReatardにメンバーだったStephen PopeBillie Hayesがツアーメンバーとして引き抜かれた為、その後メンバーを追加してMagic Kidsは誕生しています。その後、Jay Reatardと喧嘩別れしたStephen PopeBillie Hayesの二人はNathan Williams率いるWavvesに加入(先日Billie HayesWavvesを脱退していますが)していて、両バンドの音楽性を考えると通ずる部分と対照的な部分があるものの、その深い繋がりは非常に興味深いです。そして二つのバンドが2010年に印象的な作品を発表しているというのも、やはり繋がっている部分だと思いますし、アメリカのインディーズのシーンが元気な理由を垣間見た気もしています。

Memphis

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