Reverend & the Makersの『French Kiss in the Chaos』が漂わせた哀愁

Reverend & the Makersのセカンドアルバム『French Kiss in the Chaos』が発売されていたのでご紹介。
Reverend & the MakersといえばJon McClureを中心としたブロジェクトで、どうしてもこのJon McClureの略歴から紹介する必要があります。Jon McClureは地元シェフィールドでは有名人で、Arctic MonkeysAlex Turnerとも親交が深いことで知られており、実際に『Favourite Worst Nightmare』に収録された「Old Yellow Bricks」は二人の共作だし、 『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』の有名なジャケット写真にはJon McClureの弟であるChris McClureが起用されている事でも有名です。またJon McClureはReverend Soundsystemというクラブイベントの主催者でもあり、様々なアーティストをゲストDJとしてイベントに迎えており、その辺の活動も踏まえてカリスマ的な人気を誇る様になったわけで、個人的にも親近感の湧く人物像ではあります。
そんなJon McClureが率いるバンドReverend & the Makersが発表したデビューアルバム『The State of Things』は、クラブよりのダンサブルなロックアルバムに仕上がり、Alex Turnerがアルバムに参加した事も手伝ってか好評なチャートアクションを見せました(全英5位)。そしてこの度、セカンドアルバム『French Kiss in the Chaos』が発売されたのですが、これがまた、表現しがたいほどにレイドバックしたロックアルバムになっており、非常に驚かされました。ハッキリ書いてしまえば、非常に時代錯誤で90年代のUKロックを引きずった様な古いタイプのロックアルバムで、一聴しただけではどうしてこの様なサウンドになってしまったのか理解に苦しむ内容。前作同様にダンスの要素を取り入れたような冒頭の「Silence Is Talking」からアルバムは幕を開けるのですが、どうしてもビートが古い(Chemical Brothers「Let Forever Be」の様な雰囲気)というか、モッサリとしている為、決してスマートな楽曲では無く、その後の「Hidden Persuaders」、「No Wood Just Trees」へと続く楽曲に関しても、基本的な流れを引き継ぎながら進行していく為に、古いというのを通り過ぎ懐かしさが込み上げる様な印象(またホーンが効果的で哀愁が増している)を持つ事になります。だけど聞き重ねるにつれて、この開き直りっぷりは逆に天晴れと感じられるようになり、この前半の楽曲の出来自体が良い事もあって徐々に馴染んでくる結果に。続く「Professor Pickles」にしてもワルツのリズムが効果的でやっぱり哀愁が漂っているし、『French Kiss in the Chaos』は全体を通してサウンドもスケール感を意識したもので歌詞の内容も社会的で攻撃的な印象の割に、それ程重たい感じを受けずに聞くことが出来ます。「No Soap (In A Dirty War)」の様にウォール・オブ・サウンドを意識したジワジワと来るトラックも出来が良いと思うので、個人的にはその路線を突き詰めてもらいたいところ。
まあアルバムの終盤は単調になってくるし、『French Kiss in the Chaos』は決して完成度の高いアルバムではなく、発展途上で過渡期の作品ではあるのですが、内容の割に10曲39分のスマートなアルバムですので、聞きやすい一枚には仕上がっていると思います。このReverend & the Makersが、今後どの方向に進んでいくのかは分からないのですが、何かと話題を提供してくれるJon McClureだけに、今後も目は離さないようにしたいと思います。

A French Kiss in the Chaos

A French Kiss in the Chaos