The Boo Radleysの名盤『Giant Steps』をリマスター盤で振り返る

90年代のイギリスを代表するバンドであるThe Boo Radleysの名盤『Giant Steps』『Wake Up!』が三枚組のデラックスエディションとして再発されているのでご紹介。
Boo Radleysといえば『Wake Up!』及びシングルの「Wake Up Boo!」が世界中でヒットし、日本でも様々なテレビ番組のテーマソング等で流れていた為、人々の記憶にも残っていると思うのですが、今回紹介するのはその一つ前の作品である『Giant Steps』というアルバム。
個人的にはシューゲイザーの名盤として『Giant Steps』は記憶に鮮烈に残っており、その手のアルバムで人に薦める事が多いアルバムです。日本では『Wake Up!』の大ヒットのせいか、ポップバンドとしてのイメージが強く、シューゲイザーのバンドとしては、Boo Radleysは正当な評価を受けていない印象がありますし、『Giant Steps』という作品自体の存在感も薄くなっていると思います。
確かにエポックメイキング的とされたMy Bloody Valentineにカリスマ性は劣りますし、ロックンロールのカタルシスではThe Jesus and Mary Chainには敵わない。そしてChapterhouseRideにはビジュアル的には大きく引けを取る。※ただし、ボーカルのSice Rowbottomのその愛くるしいビジュアルは、90年代のロック界のハゲ頭三銃士プラスワンとしてMichael StipeR.E.M.)、Billy CorganSmashing Pumpkins)と共に心の中で深く印象に残っています(プラスワンは個人的にはJamesTim Booth)。
そんなBoo Radleysですが、サウンド的には非常に素晴らしいバンドで、彼らのポテンシャルが野心的に発揮されたのが『Giant Steps』というアルバムになります。確かに『Giant Steps』シューゲイザーというジャンルにカテゴライズされると思うのですが、様々な音楽のジャンルを詰め込んでまとめ上げたサウンドは他に類を見ないほど、素晴らしい調和を保っており、前作にあたる『Everything’s Alright Forever』ではまだまだ燻っていた様々な要素が一気に爆発したかの様な仕上がりになっています。また特筆すべきはそのメロディで、数あるシューゲイザーバンドの中で一番質の高いメロディが書けていたのがBoo Radleysで、Beatles直系でもある素晴らしいメロディを生み出すMartin Carrのソングライティング能力こそが、Boo Radleysの最大の武器であると思います。そのメロディの素晴らしさは次作の『Wake Up!』でもいかんなく披露されるのですが、今作でもその片鱗は十分発揮されており、ギターノイズの中から零れ落ちるようなメロディを聞かせてくれています。今聞いても「I Hang Suspended」「Wish I Was Skinny」「Barney (...and Me)」のメロディは輝きを放っており、その突出したメロディとノイズギターに加えて『Giant Steps』には、多重録音やコーラスワーク、ギターポップ的なアレンジであったり、次作にも引き継がれるホーンを駆使したオーケストラアレンジが詰め込まれており、Boo Radleysにしか生み出せない魅力に満ち溢れていると思います。
「Lazarus」という楽曲はそんなBoo Radleysの魅力にレゲエサウンドを加えており、シューゲイザー+レゲエ・ダブサウンドという大胆な発想とアレンジ力が結びついた名曲で、アルバムの中では終盤に収録されている事で、爽快な開放感を生みだしており、この辺も『Giant Steps』というアルバム全体のバランスの良さを演出している様に感じます。

今回の再発盤には「Lazarus」のリミックスを含めた様々なバージョンや、優れたEPのカップリングの楽曲が網羅されており、三枚組のボリュームもあって非常にお買い得です。リマスターされた事で音の輪郭もハッキリしているので、音楽の要素をダイレクトに感じられる仕上がりになっていると思います。
国内盤には解説と対訳付き。それほど価格差が無かったので今回は国内盤を購入。
ちなみに『Giant Steps』のタイトルはJohn Coltraneのアルバムから取られているのは有名ですが、日本でも同時期に大江千里が同タイトルでアルバムを発表しているのは豆知識。

GIANT STEPS(ジャイアント・ステップス)(直輸入盤・帯・ライナー付き)

GIANT STEPS(ジャイアント・ステップス)(直輸入盤・帯・ライナー付き)