The Boo Radleysの名盤『Wake Up!』をリマスター盤で振り返る

昨日に引き続き、The Boo Radleysの三枚組のリマスター盤デラックスエディションに関して。今回は大ヒット作であり、代表作でもある『Wake Up!』のご紹介。
Boo Radleys『Wake Up!』といえば胸躍るイントロのホーンがお馴染みの「Wake Up Boo!」で幕を開けるポップアルバムとして認識されており、「Wake Up Boo!」という楽曲はここ日本でも多くの人の耳に届いている為、彼らの存在は知らなくても、その楽曲を知っている人は多いと思います。『Wake Up!』というアルバム自体がブリットポップ期の代表的なアルバムという語られ方をする事がほとんどで、確かに「Wake Up Boo!」の楽曲自体は飛びぬけてポップなのですが、本質はもっと別のところにあるアルバムだと思います。
例えば、そのサウンドから思いっきりポジティブな曲だという印象がある「Wake Up Boo!」にしても、歌詞自体は旅立ちや自身を奮い立たせる意味はあれど、どこか悲しみを帯びている様にも聞こえるし、『Wake Up!』に収録された楽曲のほとんどは別れや旅立ちを意識した様な歌詞になっており、単純なポジティブさ一辺倒ではないバンドの意思を感じる事が出来ます。アルバムの一曲目が「Wake Up Boo!」という目覚めの歌である事からも分かる通り、曲の並びもどこか時系列やコンセプトを意識したもので、こういったコンセプチュアルなアルバムであるにも係わらず、『Wake Up!』の持つポップな部分だけが評価されているのは非常に残念な部分ではあります。
「Wake Up Boo」だけでなく「It's Lulu」「Find the Answer Within」(この曲は「Wake Up Boo」に負けず劣らずの大名曲)と、アルバムの前半部分にポップな楽曲が固まっているのもあって、確かに前作に比べるとポップさが目立つのですが、アルバムの後半では従来のBoo Radleysの持ち味であるノイズギターを筆頭に様々なサウンドを上手く消化した楽曲が顔を覗かせ、実験的な要素を組み込みつつもバランス良くアルバムは展開していき、真直ぐで感動的なバラードである最終曲の「Wilder」で大団円を迎えます。ですので、『Wake Up!』Boo Radleysが前作から極端なシフトチェンジをしたというよりも、魅力の一部分を増幅したともいえるアルバムなので、本質的には一切変わっておらず、Boo Radleysの持つサウンドの振り幅の広さ故に生まれたアルバムなのだと思います。
このアルバムの大ヒットは、色々な意味でBoo Radleysの音楽活動に影響を与えた事は間違いないのですが、決して世間で思われている様な一発屋という訳ではなく、この後『C'mon Kids』『Kingsize』と2枚のアルバムを発売しており、徐々にセールスが落ち込んで解散してしまった為に、一発屋的な印象を与えてしまっているのですが、『C'mon Kids』『Kingsize』の両アルバムのクオリティも非常に高く、セールスの落ち込みよりもやりたい事をやり切ったので潔く解散したという印象が強いです。この両アルバムのレビューも機会があればまた。
例の如く、シングルのカップリングの佳曲、リミックスなどを網羅してある三枚組の内容は、自分の様にシングルに買い逃しがあるリスナーには嬉しい限り。

WAKE UP!(ウェイク・アップ!)(直輸入盤・帯・ライナー付き)

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