KANの「よければ一緒に」に倣えばいいのに

KANのニューシングル「よければ一緒に」ばかり聞いています。正直なところ、二月に入ってレビューが進まなかったのですが、このシングルを買って久し振りに書かなくてはいけないという使命感に駆られたのでご紹介です。
アルバム『カンチガイもハナハダしい私の人生』からの先行シングルである「よければ一緒に」「Beポンキッキのテーマソングにもなっている事からも分かる通り、子供でも口ずさめる非常にシンプルなメロディで構成された8ビートのポップソングなのですが、これが恐ろしい程にクオリティが高いです。まずメロディが基本的には二つパートから構成されているという事が「よければ一緒に」の特徴で、この様なシンプルメロディ構成でポップソングを書く事が出来るシンガーソングライターがほとんど消滅してしまった日本の音楽業界の中で、KANのソングライティングが際立つ楽曲だと思います。驚く事にこの「よければ一緒に」はシンプルなメロディがひたすら繰り返される楽曲にも拘らず尺は6分を超えています(フルバージョンはもっと長い)。こう書いてしまうと「よければ一緒に」は単調な楽曲なのかと誤解してしまうと思うのですが、実はバックのトラックはさり気無く凝っていて、ピアノで幕を開けた後ウォール・オブ・サウンドなリズムに移行し、転調したりニュアンスを変えながらドンドンと大きく展開していきます。この辺りはシングルにインストも収録されているので聞いてみるとはっきりと分かるのですが、よくもまあこのトラックにこのメロディを持ってきたなという驚きの楽曲です。そして、詩の世界観もシンプルながらも実にKANらしく、子供向けの楽曲としても成立させながらもプロポーズを匂わせる楽曲になっていたり、冒頭の「か」あるが「も」ある(この辺は聞いてみて答え合わせしてもらいたいところ)に進展していたりと、実に味わい深いものになっています。あとKANがここまでファルセットを多用しているのは意外と珍しいと思うし、ボーカル自体の出来も冴えているのでその辺も聞きどころ。
個人的には2010年のベストシングルが早くも聞けたという喜びで胸が一杯だし、「よければ一緒に」はThe La'sの「There She Goes」の様にシンプルでタイムレスなメロディの力が際立つ大名曲だといっても過言ではないと思っています。きっと中村一義桜井和寿も地団駄踏んで悔しがるのではないでしょうか。絶対に日本のシンガーソングライターはこの曲に倣うべき。

カップリングは「よければ一緒に」と対の成すようなバラード「バイバイバイ」のライブバージョン。こちらもまさにKANの真骨頂という出来。よければアルバムと一緒にぜひどうぞ。

よければ一緒に

よければ一緒に

何とASKAとの共作も収録されているアルバム『カンチガイもハナハダしい私の人生』は3/10発売。
カンチガイもハナハダしい私の人生(DVD付)

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CDとは違うライブ感溢れたフルバージョンが聞けるすんばらしいPV