Vampire Weekendの『Contra』が全米・全英で1位に輝いた理由

という事でVampire Weekend『Contra』のレビューです。正直に言えば大絶賛だったファーストアルバム『Vampire Weekend』には、それほどピンと来なかったのですが、今作『Contra』は諸手を上げて歓迎出来そうです。
Vampire Weekendはアフロ・ビートを主体としている為に、変則的なバンドとして語られていますが、その個性的なビートが繰り返される事で少々単調に感じた前作に比べて、『Contra』は楽曲にバラエティが出てきているし、音の広がりも増している事で単調さを感じる事は無くなりました。前作『Vampire Weekend』はあくまでもインディーズ然としたギターバンドの粋を出ていなかったと思うのですが、今作『Contra』では一気にその枠が取り払われ、ストリングスやエレクトロの要素に鍵盤やサンプリングがバランス良く配置される事で非常に風通しの良いサウンドへと進化しています。元々Vampire Weekendのメロディは人懐っこいポップなものだったのですが、バックのトラックに広がりが出た事で、その特徴がハッキリと浮き立つという相乗効果も生んでいる様に思います。前作よりも多幸感のある多国籍なサウンド色が強まった事も、今作に関しては成功していると思いますし、10曲で36分というレングスも丁度良い塩梅で、全米・全英ともに売上チャートの1位(全英はインディチャートが1位でナショナルチャートでは3位)を獲得するなど、多くのリスナーに受け入れられているのも当然の結果だと思います。
とはいえ、ご存知の通りCDが売れない時代ですので、Vampire Weekend『Contra』が爆発的な売上かといえばそうでもなく、全米ビルボードでの初動の売上は124,000枚らしいので、CD業界全体の売上の低調さと他に強力なライバルも居なかった事で、Vampire Weekendが突出してしまった印象も残ります。インディーズバンドの好調なチャートアクションが昨今では目立ちますが、偏に売れているとはいえない時代になってきているので非常に複雑。モノを持たない時代にモノを残す事の難しさは感じますが、色々な意味でVampire Weekend『Contra』が「残る」作品になった事は間違い無いと思います。

コントラ

コントラ

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