Sufjan Stevensの『Age Of Adz』の混沌としたサウンドを聞く

Sufjan Stevens『Age Of Adz』のレビューを混沌とした感じで。
前作『The BQE』がインストの作品だったので、歌入りのアルバムとしては『Illinois』以来という事になると思います。コンセプトありきの前作に比べると随分自由に作られたなというのが今作『Age Of Adz』の第一印象。オーガニックでフォーキーなサウンドが減退し、シンセサイザーやエレクトロニックなサウンドが全面にフューチャーされており、様々な楽器が飛び込んで来ながら目まぐるしく展開していく『Age Of Adz』はシンフォニックなのですが、どこかカオティックで様々な感情を飲み込んだまま進行していきます。ボーカルの雰囲気も今までとは少し異なる印象を受け、感情を吐露していく様な分裂気味の歌詞もあって、非常に生々しさを感じるものに仕上がっています。
コンセプトというタガが外れて自由なサウンドを追求した結果が『Age Of Adz』というアルバムになるのでしょうが、予想していたサウンドの遥か向こう側を作り出してきたという印象で、Sufjan Stevensの十分過ぎる才能は感じる事が出来るものの、少々取り付きにくく散漫な印象を受ける結果になっているのが残念。どの様な表現方法になろうともポップさを感じる事が出来た過去のSufjan Stevensの作品に比べると、『Age Of Adz』は趣きが違いますし、天才であるが故の苦悩に満ち溢れた『Age Of Adz』は、何よりも人間臭い作品になっています。
面白いのは、評論家受けは良くとも決して万人受けする作品ではない『Age Of Adz』が、多くの人々に歓迎されている事で、チャートアクションも全米7位と上々のものになっています。これはSufjan Stevensに対する評価が高いところで定まってきたという点と、期待の高さをうかがわせる結果だと思いますし、今後のSufjan Stevensの活動をより自由にしていくキッカケになると思うのですが、やはりSufjan Stevensのメロディメーカーの才能とサウンドメーカーの才能がバランス良く発揮された作品を次作では期待したいと思います。解き放たれて一度クリアになった天才の次なる一手が楽しみ。
Royal Robertsonのジャケットとリンクする底知れなさが『Age Of Adz』にある事は確か。

ジ・エイジ・オブ・アッズ [日本盤のみ 歌詞/対訳付]

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