Cakeの『Showroom of Compassion』が対照的な盛り上がりを見せる

流れに乗って年頭に発売されていたCake待望のニューアルバムShowroom of Compassion』のレビューです。
前作『Pressure Chief』が2004年発売だったので、かなり久し振りの新作(間にEPとB面集『B-Sides and Rarities』の発表はありましたが)ですが、一切変わらないCakeサウンドShowroom of Compassion』では鳴り響いています。一切変わらないといっても、ピアノやストリングスが導入されていたり、新境地を感じる部分もあるのですが、基本的にはフォークにカントリーとファンク・ソウルを混ぜ合わせてロックンロールしているそのサウンドは変わらず、独特の如何わしさとユーモアに溢れたそのスタンスと脱力感のあるボーカルも相変わらずです。ついでにジャケットも今まで同様の統一感のあるテイストで、全てのアルバムを持っているはずなのですが、どのジャケットが何枚目のアルバムかが分からなくなりそうな仕上がりになっています。Showroom of Compassion』は全曲通してCakeでしかないCake印の楽曲で構成されているのですが、特に素晴らしいのはやはり先行で公開されていた「Sick of You」という楽曲。あとはFrank Sinatraのカバー「What's Now Is Now」も面白いです(彼等のカバーはKenny RogersからBlack Sabbathと幅が広過ぎるのですが全てがCakeサウンドで消化されていて面白い)。
さらに面白いのはサウンドには大きな変化も無いですし派手さも皆無なのに、今作が突然Billboardの全米アルバムチャートで初登場No.1になったり(でも売上枚数が44,000枚で1991年以降の統計では最低記録だったらしいのですが)、「Short Skirt/Long Jacket」(アルバム『Comfort Eagle』に収録)が2010年にiPod nanoのCMに起用されたりと、本人達のマイペース振りとは対照的にCakeの楽曲達で世間は盛り上がっている事で、日本にはあまり伝わってきませんが、アメリカを中心に巻き起こっている色々な意味での落差は非常に興味深いものがあります。あとCakeのアルバムはColumbia Records経由で発売されていたのですが、今作(正確にはB面集である『B-Sides and Rarities』から)から自主レーベルであるUpbeat Recordsからの発売になっており、恐らくアルバムの間隔が空いたのも、契約上の問題やセールス的な問題もあったのではないかと予想されるのですが、結果的にShowroom of Compassion』がヒット作となった事も痛快です。しかも自分達のスタジオが太陽光発電システムで稼動しているらしく、Showroom of Compassion』は100%のソーラパワーで作られたとの事ですので、これまた図らずともタイムリーになってしまっている訳でして、どこかの政府を含めて色々と見習うべき点は多いのではないかと思います。
という事で日本でも根強いリスナーはいるもののアメリカに比べるとやっぱりイマイチ盛り上がっていなくて、これまでは発売されていたアルバムの国内盤の発売予定も無いみたいなのですが、初めてCakeを聞く新しいリスナーにも激しくお薦めしておきます。
その紛らわしいアルバムジャケットを発売順に並べてみる。

Motorcade of Generosity (Dig)

Motorcade of Generosity (Dig)

Fashion Nugget

Fashion Nugget

Prolonging the Magic

Prolonging the Magic

Comfort Eagle

Comfort Eagle

Pressure Chief

Pressure Chief

Showroom of Compassion

Showroom of Compassion