The Nationalの『High Violet』がシブ知で上り詰めたサウンド

The National『High Violet』聞いています。
地味といえば地味なんですが、非常に手堅い出来に仕上がった『High Violet』は非常に好意的に受け入れられている様で全米チャートの3位を記録。前作『Boxer』も良い仕上がりだったのですが、68位だった事を考えれば大躍進だといえます。思えばThe Nationalは3枚目のアルバム『Alligator』が話題を呼んだ導火線的なアルバムで、今作『High Violet』でまさにホップ・ステップ・ジャンプ的な結果を果したといえると思います。
内容に関しても劇的な変化は見られずに、ひたすら深化していった様な内容で、相変わらずのエエ声が大陸的な壮大さを持つサウンドに染み入っており、もはや貫禄の仕上がりになっています。The NationalサウンドBruce SpringsteenからJoy Divisionまで広く例えられていますが、決して懐古主義的なサウンドではなく、どちらかといえばポスト・パンクと形容される様な新しいサウンドの要素を巧みに取り入れている事に面白みがあり、決してレトロバンドでは無いという事が素晴らしいと思います。もちろん、Matt Berningerのボーカルの力が加わる事でその音楽自体の魅力が高まっているのは間違い無いのですが、この緻密なサウンドに下支えされている事で、その魅力が爆発した様な作品になっています。The Nationalサウンドが地味ながらも極まった事によって、前作『Boxer』にあった代表曲「Fake Empireの様な飛び抜けた曲がなくとも、アルバム全体で聴かせる力が更に強まり、今作『High Violet』で名実ともにブルックリン、そしてアメリカを代表するバンドへ上り詰められたのだと思います。今後The Nationalを取り巻く環境は一変すると思いますが、『High Violet』自体も長く楽しめる作品でもありますし、盛り上がっていない日本でも十分に浸透するサウンドだと思うので、興味を持った方はぜひどうぞ。

High Violet

High Violet

PVもイメージ通りに渋い仕上がり。