Siaが『We Are Born』で聞かせるカバー曲のセンス

オーストラリアのチャートで見事2位を獲得したSia『We Are Born』をご紹介。
SiaことSia FurlerZero 7の作品への参加で注目を浴びたシンガーで、ソロアルバムとしては4枚目のアルバムになります。前作『Some People Have Real Problems』はどちらかといえばエレクトロの要素も含むフォークサウンドと彼女のボーカル自体が印象的だったのですが、今作『We Are Born』ではアップテンポなダンスミュージックが完全な主役となっており、大きくサウンドを変化させています。
先行シングルとなった「You've Changed」「Clap Your Hands」が象徴するようにカラフルなサウンドは前作までのSiaのイメージを一変させるもので、その個性的な存在感ゆえにBjörkあたりと比較されていくのかなと考えていた自分の想像を超えて、遥か向こう側に行ってしまった感があります。もちろん、これは良い意味で期待を裏切ってくれたという事で、今作『We Are Born』Siaが多くの人に受け入れられるきっかけになる間口の広い作品である事は間違いないと思います。『We Are Born』という作品が素敵なのは、この様にポップなアルバムのエンディング(ボーナストラック的な「I'm in Here」の Piano Vocal Versionを除く)にカバー曲を持ってきている事で、しかもそれがMadonna「Oh Father」という実にシリアスな楽曲をチョイスしているという事です。「Oh Father」Madonnaの大ヒットアルバム『Like a Prayer』に収録された楽曲で、父親に虐待を受けていたMadonnaの心情が描かれており、Siaの世界観にも非常にマッチしていると思うのですが、それだけでなく『Like a Prayer』がそうであった様にダンサブルなポップアルバムではあるものの、深い悲しみや葛藤も描写しているという点が、Sia『We Are Born』ともリンクしているし、Madonnaの持つ世界観を自己流にアレンジして、正しく再構築しているのではないかと思います。
ちなみに前作『Some People Have Real Problems』では「I Go to Sleep」をカバー(The Kinksの楽曲ですがPretendersのカバーが有名)しており、自分もこの曲のカバーが楽しみで前作を購入したのですが、サウンド自体はオーソドックスなカバーでもボーカルの魅力とそのセンスが光る好カバーに仕上がっていたし、Siaのカバー曲のセンス自体が素晴らしいのだと思います。
『We Are Born』のプロデューサーはThe Bird and the Beeのメンバーで近年のダンス&ポップアルバムには欠かせない存在になっている売れっ子のGreg Kurstinで、Siaの楽曲とも相性の良さを発揮しています。前作『Some People Have Real Problems』ではBeckがバックコーラスで参加していたりしたのですが、今作『We Are Born』ではThe StrokesNick Valensiがギターで全面的に参加。また、Sia自身もZero 7は言わずもがな、Christina Aguilera『Bionic』に参加していたりと、多くのミュージシャンに支持されている訳で、M.I.A.をプッシュするならSiaもどうぞ宜しくお願い致します、日本の各メディア様。

We Are Born

We Are Born


こうやって芸人以上に体張れるところも好き。