フジファブリックの『Chronicle』が凌駕した変態サウンド

フジファブリック『Chronicle』が変態の域を凌駕する良作になっていたのでご紹介。

正直なところ、その楽曲は耳にしていたもののフジファブリックを本腰入れて聞き始めたのがシングル「Surfer King」からで、そこからは遡って聞いた為、ユニコーンコピーバンドをやっていた事も最近まで知りませんでしたし、今までの作品の中からユニコーンの影響を強力に感じる事はほとんどありませんでした。しかし今作『Chronicle』からはユニコーンからの多大な好影響を感じる事が出来、さらには今までの作風から一変したネクストレベルの作品になっていたのでご紹介したいと思います。
『Chronicle』はボーカル志村正彦が全作詞・作曲を手掛けている為、彼の嗜好が色濃く出ているのですが、これが今作でフジファブリックが大きく変貌を遂げたひとつの要因になっており、楽曲のバラエティはあるもののストイックに作り込まれた統一感が感じられます。ストックホルムで録音されたという事で、様式美すら感じる美しいサウンドがあり、ボーカルの質を含めた全体のイメージで何となくウィーンで作られたくるり『ワルツを踊れ Tanz Walzer』あたりと比較されると思うのですが、オーケストラをサウンドのアクセントに使っていた『ワルツを踊れ Tanz Walzer』とは、一音一音の響きの質以外は似て非なるサウンドだなと感じました。
全体的にサウンドから粘りや癖が消え、転調を繰り返しながらもキラキラとしたサウンドの中に、相変わらず良質のメロディが落とし込まれており、そこに志村正彦の一層柔らかくなったボーカルが乗って来ています。歌い方自体も奥田民生化していると思うのですが、そのメロディ自体も復活したユニコーンを歓迎するかのごとくユニコーンライクなものになっています。特に一曲目のバウムクーヘンなんかはユニコーンの新曲(というか「Wao!」のメロディにそっくり、まさか輪つながりでバームクーヘンではあるまいが)に聞こえない事もない様な出来栄え。キラキラしたサウンドはまるでELOの様ですし(まあ奥田民生+キラキラ=ELOみたいなものですが)、今までのフジファブリックには無かった一音一音の美しさが今回のアルバム『Chronicle』には息づいている様に思います。もちろん、パワーポップ的なアプローチやハードなサウンド、そして独特の志村ラップもあるのですが、その音の質は今までのフジファブリックには無かった透明度の高いもので、全体のサウンドの印象をガラリと変えている様に感じます。
確かに今までのファンからすると、同じ変態的なサウンドでも方向性が変わっているだけに、受け入れられるのに時間が掛かると思いますが、個人的には好きだった前作『Teenager』で見せたポップさが推し進められている点は大歓迎ですし、特にバウムクーヘン」、「クロニクル」、「Clock」、「ないものねだり」などメロディラインが素晴らしい楽曲群は今までのファン層とは違う層にアピール出来る要素になっていると思います。
ちなみにプロデューサーの欄にはフジファブリックに並んでサポート的な扱いでThe Merrymakersのクレジットが!!(「Sugar!!」「同じ月」のプロデュースは亀田誠治Merrymakersとはシングル「Sugar!!」カップリング「ルーティーン」での起用からの流れ)。これが大正解の人選で、Merrymakersの名前を日本音楽界でまた最近見かけるようになったのが嬉しいところ。ちなみにちなみに、MerrymakersPuffyのシングル「マイストーリー」もプロデュースしていてこれが最高の出来。そのPuffyの最新シングル「日和姫」カップリングである「Doki Doki」志村正彦の作詞・作曲で、ご存知の通り初期のPuffyをプロデュースしていたのは奥田民生なわけですから、ちゃんと繋がってクロニクルが続いているのが嬉しい。

(5/29追記)不二草紙 本日のおススメさんに『Chronicle』のコード進行に関して詳しい記載があります。Mewと似た印象とも書かれており、なるほどなと。該当記事はこちらからどうぞ

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