The Pleasersの嬉しい再編集盤『Thamesbeat』

The Pleasersの嬉しい再編集盤『Thamesbeat』が国内盤でボーナストラックも付いて発売されているのでご紹介。

The PleasersといえばThe Who「The Kids Are Alright」のカバーが有名で、今回の『Thamesbeat』も90年代に輸入盤で発売されていたものの現在では入手困難だったので、自分の様に捜していたリスナーからするとボーナストラックまで収録されたこの盤は待望の発売だといえます。ありがとうAIR MAIL RECORDINGSさん
さて、内容の方も書いていきます。The Pleasersはネオ・モッズシーンの中から登場したのですが、音楽性はどちらかといえばパワーポップに近い印象を受けます。The Muffs' Fanpage In Japanぴかおさんも指摘していますが、Raspberriesに近いサウンドだともいえると思います。RaspberriesよりもThe Pleasersの方が甘めのサウンドで、ライナーノーツにもある通りBeatlesを下敷きにした所謂マージービートなのですが、The Pleasersは非常にメロディとサウンドのバランスが良く、同じ系譜にいるバンドの中でも頭ひとつ抜けていて、ボーナストラックを含めて全曲を楽しめる内容になっています。ぴかおさんがThe Pleasersパブ・ロックの視点から絶賛されていますが、ライナーノーツによると『Thames Beat』という単語は『Mersey Beat』をもじったものらしくて、テムズもマージーもどちらも河の名称で、The Pleasersが生み出した「テムズビート」という言葉は現在ではLarrkin Love、The Holloways、Good Shoes、The Young knives、Mystery Jets、Jamie-T、The Rumble Strips(もうすぐ新作が発売)などのバンドの音楽シーンの総称にもなっています。パブ・ロックに影響を受けたJamie-Tなんかが回りまわって「テムズビート」なんて呼ばれているのも何かの縁かもしれませんね。
おっと話が逸れました。『Thamesbeat』には前述の「The Kids Are Alright」「My Girlfriend’S Back」など素敵なカバー曲も収録されているのですが、オリジナルの楽曲にも良い曲(Undertones「Teenage Kicks」の様なメロディラインの「Troublemaker」も最高)が多く収録されています。Bo Benham & Steve McNerneyのソングライティングコンビはもっと後世に名を残す可能性もあった素晴らしいコンビだと思うし、The Pleasers自体が正統派のロックバンドとしての可能性も秘めていただけに、残された音源が少ない事は非常に残念ではあります。Tommy BoyceThe Monkeesの作家チームとして有名。Boyce and Hart名義でのアーティスト活動も行っていたが、病気を苦に自殺で1994年に亡くなっている)をプロデューサーに迎えている事(今作にはTommy Boyceを連呼する「Tommy Boyce」なんて曲も収録されている)から、アイドル的な存在も求めたであろう当時のレコード会社の意向とアーティスト志向が上手く噛み合わなかったのかもしれませんが、メンバーはその後も音楽活動を続けており、その点では時代の波に乗り切れなかった非常に惜しいバンドといえるかもしれません。
The Pleasersのやっている音楽というのは現代のリスナーにおいてどの様に聞こえるのかは分かりませんが、タイムスリップしたかの様なノスタルジーに浸かるだけでなく、現代にこの音楽が届いた事に素直に喜びたいと思います。

テムズビート

テムズビート

The Pleasers 'The Kid's Are Alright'