くるりの『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』に吹き抜けた自由な風

くるり9枚目のアルバム『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』を購入したのでレビューでも。
最初に断っておくと、くるりに関してはほとんどの音源を購入はしてきているものの、自分にとっては深く入れ込んで熱心に聞き続けているというよりも、良い意味で普通に音源を購入して、気が向いた時に何気なく聞いているという不思議な存在。ですので、非常にフラットな気持ちでこの『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』を聞いていますが、これは素直に良いアルバムだと思います。
今までコンセプトや責任感に縛られてきた感のあるくるりの過去の作品と比べると、『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』は異常に風通しが良いアルバムで、これはもちろんユーミンというスパイスが効いている事も大きいのですが、この自由さこそが自分がくるりに求めていたものではなかったのかと、嬉しくなりました。バラエティに富んだ楽曲で『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』は構成されていますが、何よりも歌メロが印象的な楽曲が多く、ソウルフルだけどどこか歌謡的な歌が耳に残る楽曲が揃っており、メロディと歌だけに絞ればくるりの最高傑作といっても過言ではないと思います。個人的なベストトラックは「魔法のじゅうたん」ですが、奥田民生が歌っている様で大陸的な「さよならアメリカ」、ギターのリフが印象的で、昨今のゲゲゲブームにもフィットしてしまう「目玉のおやじ」、ラフだからこそ岸田繁のソウルフルなボーカルが冴えている「犬とベイビー」あたりも個人的には甲乙付け難い楽曲です。また、Blur「Parklife」oasis「Stay Young」が手を取り合った様でブリティッシュ色が色濃く出ている「シャツを洗えば」は、ユーミンの個性がくるりのアルバムの中に収まりきれるのかが心配でしたが、アルバムの中核を担いながら違和感無く収まっており、洗濯の歌だけに風通しの良さを更に演出する役目を果しています。
アルバムタイトルの『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』は深い悲しみの果ての言葉だと思うし、収録されている楽曲の歌詞もどちらかといえば悲しみに満ちた様なものが多いのですが、そんな事を感じさせないほどにポジティブにサウンドが次々と耳に飛び込んできて、一気に聞き終えてしまうのが『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』の魅力だと思うし、くるり史上で、恐らく一番収録時間が短いアルバム(41分)なのに何よりも一番自由なアルバム。それが『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』だと思います。
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