Puffyの『Thank You』で感じる全方位への感謝

Puffy『Thank You』を聞いています。近年のPuffyの作品は外部から作家を多数動員して、様々なタイプの楽曲を詰め込んだアルバムを発表していて、Puffyのオモチャ箱の様な魅力は発揮されていたものの、各作家の個性が色濃く出過ぎていた為、アルバムとしての統一感というかまとまりには欠けていた感がありました。
今作『Thank You』はそのタイトルから分かる通り、デビュー15周年を迎えたPuffyからリスナーに感謝の思いを届ける為に、近しいスタッフやバンドメンバーと作り上げられた集大成的な一枚に仕上がっており、近年のPuffyの作品とは趣きの異なる作品になっていると思います。その事は、収録曲が沢山のデモテープから選ばれている事や、アルバムのプロデュース自体もマイケル河合に一人に委ねられている事からもハッキリと分かります。ちなみに、マイケル河合ユニコーンのデビュー時から関わっていたソニーの重鎮プロデューサーですので、この辺の人選も今作のコンセプト故のものだと思います。
各楽曲に耳を移すと奥田民生作の「マイカントリーロード」とシングルになっていた「R.G.W.」は、やはりPuffyの特色をツカミながらの新境地で、「マイカントリーロード」なんて現在の奥田民生まんまのサウンドPuffyがやっているだけなのですが、それだけで鮮やかな印象を残すのはやはり両者の相性の良さでしょう。他の楽曲で出来が良いのは木下裕晴が提供している「フィッシュ・オン」で、その後の「NO!」から「欲望」、そして「ハッピーバースデイ」でエンディングを迎える終盤がアルバムのハイライトになっていると思います。『Thank You』はタイアップの付いている楽曲も多い為、すでに耳にしている楽曲も多く、個々の楽曲はバラエティに富んではいる(「Wake up, Make up」ではスチャダラパーを客演に招いてのラップにも取り組んでいますしね)のですが、全体のサウンドの雰囲気を含めたレベルが統一されている印象で、この辺は一人のプロデューサーが手掛けた意味合いがハッキリと出ていると思います。
前述した通り『Thank You』は15周年を迎えたPuffyからの感謝の証である一方、パートナーであるお互いに向けられたであろう歌詞が随所に散りばめられていて、パートナーへの感謝やバンドメンバーへの感謝の気持ちが『Thank You』というアルバムのもう一つのテーマにもなっている事は、アルバムを聞いた人であれば容易に感じ取る事が出来ます(歌詞カードにはバンドメンバーのクレジットが各曲ごとにシッカリと記されている事からも分かります)。今回の『Thank You』Puffyとしては一区切りがついた形になると思いますので、今後の展開も楽しみなのですが、『Thank You』は何よりもPuffyの存在を過去のものだと思っている多くのリスナーに対しての、新たな名刺代わりの一枚になると思うので、まずはこの一枚を聞いてみて下さい。

Thank You(初回生産限定盤)(DVD付)

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