Fastballが『Little White Lies』で投げ込んだポピュラーソング

地道に活動を続けているFastballが通算五枚目のアルバム『Little White Lies』を発表したのでご紹介。

Fastballといえば90年代後半から活動を続けているバンドで、楽曲のイメージからパワーポップよりのバンドとして認識されていると思います。セカンドアルバム『All the Pain Money Can Buy』に収録の「The Way」のヒットで一躍有名になったFastballですが、その後はまさに地道な活動を継続しており、今回のアルバムもひっそりと発売されていました。個人的にはサードアルバムの『The Harsh Light of Day』を発売当時は良く聞いており、名曲「You're An Ocean」も強く印象に残っています。
そんなFastballが四枚目となるアルバム『Keep Your Wig On』を発表したのは2004年ですので、バンドの活動自体を心配していたのですが、今回のアルバム『Little White Lies』が久しぶりに届けられてまずはひと安心。そして、その内容も素晴らしいものになっていたので嬉しい限りです。『Little White Lies』には「The Way」「You're An Ocean」の様に飛びぬけた楽曲は収録されていないものの、全体的にソングライティングのレベルが向上しており、キャリアを重ねる事で築き上げられたまとまりのあるサウンドを披露してくれています。正直なところFastballサウンドには取り立てて書くほどの特徴は無いですし、非常にオーソドックスなスリーピースのロックバンドだと思うのですが、全体の曲のレベルを上げることによって、他のバンドと一線を画した息の長いバンドに成りえる事が出来ていると思います。各楽曲に耳を移すと一曲目の「All I Was Looking For Was You」からいきなりポップな滑り出しで、中盤まで矢継ぎ早に楽曲が繰り出されるのですが一貫してメロディの耳馴染みは良く、中盤には多少の変化球を投げ込むもののカットボール程度の変化球ですので、そのバンド名の通り、速球(といっても楽曲のスピードが速いというわけではない)でグイグイ押して一気に完投してしまう印象のアルバムになっています。12曲37分という収録時間というコンパクトな内容で勝負しているのも好感が持てますし、良質のポップロックアルバムとしてお薦めできる作品だといえると思います。

「Little White Lies」という同名タイトルには有名なポピュラーソングもあってAnnette Hanshawも歌っているのですが、Fastballの楽曲も選り抜かれてくる事で、万人に親しまれるポピュラーソングの域に少しずつ近づいている印象を受けます。そして、今後も大きなヒットを飛ばさなくとも優秀なアルバムを作り続ける事が出来る基盤が今作『Little White Lies』でしっかりと固まったと感じます。既に90年後半にデビューしたバンドが姿を次々に消す中、Fastballの様に曲の力で勝負できるバンドが生き残っているのを見ると嬉しくなりますし、音楽業界も捨てたものでは無いなと思います。という事で次作はもう少し早い登板感覚で発売される事を願いつつ、応援を継続したいと思います。

Little White Lies (Dig)

Little White Lies (Dig)

Fastball - Little White Lies

名曲Fastball-You're An Ocean