Belle & Sebastianの『Write About Love』が送り届けたサウンド

Belle & Sebastianの新作『Write About Love』が投函されたのでご紹介。
Belle & Sebastian7枚目のアルバム『Write About Love』はいつもと変わらないサウンドながら、でもどこか新しいという非常にBelle & Sebastianらしい一枚に仕上がっていました。前作『The Life Pursuit』からは4年ぶりとなる新作なのですが、間にStuart Murdochが手掛けたGod Help The Girl『The BBC Sessions』などの作品があった為、それ程間が空いた印象は受けなかったのですが、やはりこうして新作を聞くとまた別次元の印象を受けます。
さて、今作『Write About Love』Norah Jonesと女優であるCarey Mulliganがボーカルとして参加という事が話題になっており、加えてメンバーであるSarah Martinのボーカルが印象的な楽曲も多い為、女性ボーカルの割合を非常に多く感じます。これは明らかに女性ボーカルをオーディションで募集し歌わせるというコンセプトがあったGod Help The Girlからの流れで、『Write About Love』が非常に明るい響きを持ったアルバムに仕上がった大きな要因になっていると思います。Norah Jonesが参加した「Little Lou, Ugly Jack, Prophet John」は、サウンド的にはBelle & Sebastianというよりも、Norah Jonesのアルバムに収録されていても違和感の無い楽曲という印象で、彼女のボーカルの魅力を打ち出したスロウな楽曲は、次曲のアップテンポな「Write About Love」とのサウンドとは対照的で、アルバムの真ん中に収録されている事からも分かる様に『Write About Love』の全体の構成の面でも大きな役割を果していると思います。
サウンド的には非常にクリアでリズム隊がシッカリと響くプロダクションが効いており、音と音との隙間が減って様々なサウンドが耳に飛び込んでくる印象を受け、Belle & Sebastian独特のセンチメンタルな幽玄さは減退している様に思います。まあその辺は好みが分かれる点だとは思うのですが、メロディのクオリティは変わらず高いですし、非常にポジティブで優しげな空気に『Write About Love』は包まれている作品で、新たなBelle & Sebastianの魅力を感じる事が出来ます。前作『The Life Pursuit』を聞いた時も明るくてポップな作品だと感じたのですが、同時に力強さを感じました。その力強さが『Write About Love』では優しさに変化し、さらに色彩豊かになった事で『The Life Pursuit』とはタイプの違う明るさを打ち出せている様に思います。この辺はプロデューサーであるTony Hofferのプロデュース意図やバンドの方向性がシッカリと噛み合い、上手く機能しているのではないかと思いますし、サウンドに変化を与えながらも、コンセプトや核になるサウンドが一切ぶれずに安定した活動を続けているBelle & Sebastianはやはり素晴らしいバンドだと思います。
国内盤は2曲のボーナストラック入りで、世界観を壊す事のない佳曲だったのでお勧めできます。また、歌詞の目線に変化が見られ、その辺は妹沢奈美氏のライナーノーツに詳しくあるので、興味のある方はどうぞ。

ライト・アバウト・ラヴ~愛の手紙~

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本作に直接関係ないですが、女性ボーカルとの相性の良さを発揮する夢のコラボレーション。With Jenny Lewis