Miles Kaneの『Colour of the Trap』から聞こえてくる筋金入りの正統派

正統派。Miles Kaneのアルバム『Colour of the Trap』を聞いてそう思う人は多いと思います。という事で正統派なレビューを。
Miles KaneのキャリアはThe Little Flames、The Rascals、The Last Shadow Puppetsと重ねられ、その名前を耳にした事がある人も多かったと思うのですが、ここにきてソロアルバムが届けられました。正統派のブリティッシュロックとポップソングが散りばめられたアルバムは、12曲38分というコンパクトで潔い内容で、それはそれはUKロックを好んで聞く人には避けては通れない仕上がりとなっております。下敷きになっているサウンドは例えばパブロックであったりグラムやガレージだったり、Scott Walker的でオルケスタルな要素であったりと多岐に渡るわけですが、その全てをバランス良く敷き詰めて、尚且つ中途半端で尻切れトンボにならないというアルバムは稀有だと思います。
アルバムの収録曲のうち6曲がAlex TurnerArctic Monkeys)との共作のクレジットになっていますが、二人のユニットでもあるThe Last Shadow Puppetsサウンドよりも多くの人に受け入れられる楽曲に仕上がっているのではないかと思います。他にも60年代のガレージバンドThe Music MachineSean BonniwellGruff RhysSuper Furry Animals)との共作(Gruff Rhysはプロデュースにコーラスでも数曲参加)があったり、「My Fantasy」という楽曲ではNoel Gallagherがコーラスを取っていたり(ちなみにバンドメンバーとしてドラムを叩いているJay SharrockBeady EyeChris Sharrockの息子)と、多彩なミュージシャンが『Colour of the Trap』には参加しています。また、アルバムのプロデュースにもDan Carey、Dan the Automator、Craig Silvey、Gruff Rhysと多彩なメンバーを起用しており、この辺が『Colour of the Trap』がクラシカルだけどレトロ過ぎずにモダンさを保てている大きな要因にもなっていると思います。
『Colour of the Trap』は基本的に全ての楽曲でメロディも書けており、総じてクオリティが高くはあるものの、Gruff Rhysとの共作「Quicksand」Gruff Rhysのポップセンスが上手く溶け込んだ楽曲でアルバムの中で最も耳に残りますし、Sean Bonniwellとの共作「Inhaler」はとにかくギターとリズムが格好良く、特にこの2曲は強力な魅力を放っている様に思います。また、Miles Kaneの奏でるギター自体も魅力的ですし、癖のあるボーカルも非常にUKのロックボーカリスト然としています。しかも見た目はどこかPaul McCartneyの若かりし頃を髣髴させるタレ目を誇っており、Miles Kaneは正にUKロックの系譜を正しく繋いでいく存在になっていると思います。本国での評価もナショナルチャートで11位を記録するなど、それを受け入れる様なアクションを起こしていますし、Miles Kaneにかかる期待は今後もドンドン膨らんでいくのではないでしょうか。

COLOUR OF THE TRAP

COLOUR OF THE TRAP

Miles Kaneが重ねてきたキャリアに伝統的なブリティッシュロックの要素をガッチリと取り入れた『Colour of the Trap』。恐らくこのアルバムは日本でも受け入れられるサウンドだと思います。ボーナストラック入りの国内盤も発売されているのでこちらもどうぞ。
カラー・オブ・ザ・トラップ

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