John Fruscianteの『The Empyrean』は計画的な音圧の神々しい一枚

John Fruscianteの新作『The Empyrean』Red Hot Chili Peppersとは別次元のアルバムに仕上がっていたのでご紹介。

名作『Shadows Collide with People』の後の6作連続のリリースからすると、かなり久しぶりに感じる新作アルバム『The Empyrean』は今までの作品と明らかに違う音響的味わいを持った作品になっています。
聞いてみて第一に感じたのがこの作品の音圧が低い事。しかも1曲目がインストの曲だったので尚更音が小さく感じ、徐々に音圧は上がってくるものの、近年の作品としては明らかに低い部類(当方のプレイヤーやCDに不具合が無い限り)。その結果、作品を一聴しただけでは、かなり地味というかはっきりいって全くピンと来ない印象。しかし、ボリュームを上げて聞く事になった二回目以降はガラリと印象が変わり、徐々にこのアルバムの意思が聞こえてくる結果に。
1曲目の「Before The Beginning」Funkadelic「Maggot Brain」に対するオマージュ(そのまんまと言えばそのままなんですが)で、先述の通り長尺のインスト。2曲目の「Song To The SirenTim Buckleyのカバーですが、John Frusciante特有の浮遊感を打ち出したアレンジ。そして3曲目にようやく今までのJohn Fruscianteらしさ(というかRed Hot Chili Peppersらしい歌もの。Flea[フリー]がベースを弾いているというのもあるかも)を感じる「Unreachable」が配置してある。アルバムが進むに連れて混沌としながらも神々しさすら感じるJohn Fruscianteのボーカルが際立ち、浮遊感のあるサウンドと交じり合って独特の雰囲気を重ね合わされていく様な構成になっており、一枚の作品として完成された一枚となっています。ボーカルに様々なエフェクトが掛かっていたり、サウンド面でもストリングスやエレクトロな要素が取り入れられてはいるものの、メロディを奏でる様なJohn Fruscianteのギターは健在なので従来のJohn Fruscianteのファンは満足できる内容ではないでしょうか。ただし、とっつき難い作品ではあるので、入門盤としては狭い門となっているともいえるでしょう(特にRed Hot Chili Peppers的なサウンドを期待する人にとっては)。また、働き者のJohnny Marrがギターを弾いている「Enough of Me」「Central」の中にはThe Smithsらしい旋律も垣間見られ、ギターを弾く人間にとっては夢の様な共演となっているので、その辺に惹かれる方にもお勧め。
冒頭で書いた音圧が低い事もボリュームを上げて聴かせる為の仕掛けだとしたら、自分は見事にその仕掛けに嵌ったわけでして、このアルバムを買ってボリュームが低く感じた人はぜひボリュームを上げてじっくりと聴いて頂きたいもの。その辺の拘りを作り手側が要求するのもオツだなと思った次第であります。

自分は輸入盤を買いましたが、どうやらボーナストラックが良曲らしくライナーも充実している様なので国内盤を(ただし、この『The Empyrean』に関してはボーナストラックが世界観のバランスを崩す蛇足になるかも)。

John Frusciante - Unreachable