Fatboy SlimとDavid Byrneが『Here Lies Love』で見せた素敵な舵取り

Fatboy SlimことNorman CookDavid ByrneTalking Heads)とタッグを組んで製作されたアルバム『Here Lies Love』のご紹介。
フェルディナンド・マルコスフィリピン共和国大統領の未亡人であるイメルダ夫人と、その幼少時代から長く仕えたエストレーラ・クンパスの人生をテーマにしたコンセプトアルバムという事で、サウンドが全く想像つかなかったのですが、結論から書けばダンス・クラブサウンドというより、ポップなディスコサウンドにボサノバやミュージカルの要素も加わった非常に聞きやすい一枚に『Here Lies Love』は仕上がっています。2枚組で全22曲というボリュームの『Here Lies Love』には様々なゲストボーカルが参加しており、David Byrneがボーカルを取る曲は2曲(しかもディスク2にさり気無く収録)のみ。David Byrne目当てで購入した人にしてみれば、少々肩透かしかと思いますが、様々な女性ボーカルが次から次にボーカルをとる形態こそが、そのコンセプトには合っているのだと思うし、結果的にはカラフルでポップな作品に『Here Lies Love』は仕上がっています。恐らくサウンドの方はFatboy Slimでリリックの面はDavid Byrneが舵を取っていると思うのですが、この辺のバランスは上手く取れていますし、極端な方向に進まずに抑制力が働いた結果、ポップミュージックとして機能した作品になっているので、コラボレートとしては成功の部類に入ると思います。個人的には同じくFatboy Slimが製作し多数のコラボレートを収録したTHE BPA (Brighton Port Authority) のアルバムより出来が良いのではないかと感じます。
参加しているボーカリストTori Amos、Theresa Andersson、Nicole Atkins、Camille、Charmaine Clamor、Steve Earle、Sia、Cyndi Lauper(!)、Nellie McKay、Allison Moorer、Sharon Jones、Natalie Merchant、Róisín Murphy(!)、Candie Payne、Kate Pierson、Alice Russell、St. Vincent、Santigold、Martha Wainwright、Florence Welch、Shara Wordenと新旧織り交ざった豪華なメンバーになっており、それぞれのボーカルが持ち味を打ち出しているものの、決してアルバムの色彩を損なうものではなく、統一感を保ちながらアルバムが展開していくのは、二人(特にDavid Byrneになるのでしょうが)の舵取りの素晴らしさだと思います。
ジャケは絶妙な感じですが、内容は充実しているのでぜひどうぞ。

Here Lies Love

Here Lies Love