ノエル・ギャラガーの福岡公演で果たされたリベンジ

ということで福岡でのノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズのライブを見てきました。もうこれは有名な話ですが福岡とoasisには因縁めいたエピソードがあるわけで、知らない方のために一応説明しておくと、oasisとして1995年にスカラエスパシオで開催される予定だったライブは来日ライブ自体が中止、2000年のマリンメッセはリアム・ギャラガーが途中退場、リベンジを果たすはずの2002年の国際センターではまたしてもリアムが途中退場するという始末。
2度の途中退場を現地で見ていた者としては、その辺のトラブル含めてのoasisとして受け止めていたわけですが、結局その後は福岡でライブを行うことなくoasisは解散しているわけで、多くの人からしてみると今回のライブに関しても一抹の不安はあったわけです。もちろん、過去のライブでリアムが退場した後はノエルがなんとか踏ん張ってライブとして成立させたわけで、ノエル自身には非が無いのですから、福岡に関してはノエルを悪く思っている人はいないわけで、今回のライブも無事に開催さえすれば、色々あった福岡とoasisの因縁に対してもようやく溜飲を下げることが出来るという記念碑的なライブになるわけです。
奇しくもZepp Fukuokaの閉鎖のニュースが飛び込んできた直後のライブということで、色々と複雑な気持ちを抱きつつ会場に到着。以下はライブの感想と新作『Chasing Yesterday』の雑感などを少々。


結果から言うと素晴らしいライブ。やったぜ兄貴という感想が一番しっくりくる内容でした。
セカンドアルバムが発売され、ソロの楽曲の手札が揃ったということが一番大きいと思うのですが、とにかくライブの構成がしっかりとしており、oasis時代の楽曲とのバランスも絶妙だったように思います。
ファーストアルバム『Noel Gallagher's High Flying Birds』に関しては、曲自体は粒ぞろいだったものの、作品としてはやや取り散らかっていた印象を受けていたのですが、ライブの中に組み込まれると楽曲の良さが際立っていたし、そこにセカンドアルバムの楽曲のボトムの太さとバラエティの豊かさが加わることで非常にまとまりと安定感を感じるライブになっていました。
福岡のお客さんも因縁のこともあってか、暖かくも熱狂的に受け入れていたと思いますし、驚いたのはoasis時代の楽曲だけでなくソロでの楽曲でも合唱している人が多いことで、メロディの力、ひいては歌うということに対してのノエル・ギャラガーの楽曲の強みが存分に感じられるライブになっていました。ライブ自体のハイライトは全編に渡ってあったのですが、一番印象に残ったのは「You Know We Can't Go Back」と「Champagne Supernova」。
『Chasing Yesterday』で一番の名曲は「You Know We Can't Go Back」でこのポップソングをアルバムにさらっと収録できたことこそが、セカンドアルバムにおける一番の進化だと個人的には思うのですが、この曲から「Champagne Supernova」という流れの中で、この流れをリアムが歌えばどうだったかという思いが頭を巡ったのは確か。そのことを「Fade Away」や「Digsy's Dinner」を聞いた時よりも強く思ったのは、アレンジの問題だけではなく、色々と割り切れていない複雑な思いを聞き手側が感じてしまっていることも大きいのだと思います。もちろんノエル本人は意識していない(というか既に折り合いがついている)だろうし、今回の『Chasing Yesterday』という作品は全体を通せばリアムの必要性を排除した作品ではあるのですが、それにも関わらずどこかでoasis時代と重ね合わせてしまう空気が感じられた事は単なるノスタルジアではなく、時間は進む、でもどこか発展的な感覚だと思っておきます。
それにしてもサビを完全に観客に預けて、観客のほとんどがそれを待ち望んでいることがライブのスタイルとして成立する楽曲って「Don't Look Back In Anger」ぐらいしか思い当たらない。濃密な空間、ごちそうさまでした。

チェイシング・イエスタデイ

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