スピッツのアリーナツアーの意味を考える『SPITZ THE GREAT JAMBOREE 2014 “FESTIVARENA”』7/21福岡国際センター

2014年は福岡で5公演という奇跡のスピッツイヤーなのですが、ようやくライブに行けました。今回は福岡では初のスピッツアリーナツアーで、初めての単独武道館公演を含む本格的なアリーナツアー。過去2回開催されたアリーナツアーは開催も東名阪までで、アルバムリリースツアーの一環の+αな位置づけだったと思います。ということで、いったいどういう風の吹き回しなのかと興味津々でライブに参加してきました。


ライブに行くまでは福岡の5公演の意味や、アリーナツアーの必要性がハッキリとは見えてこなかったのですが、ライブが始まった瞬間にその意味を理解できました。スピッツというのは非常に天の邪鬼なバンドではあるので、アリーナを埋め尽くしてあまりあるほどのセールスをあげていた時代にはアリーナツアーを行わず(初めてのアリーナツアーが2009年)に、あえてこのタイミングで開催したのもアンチテーゼの一種で、むしろこのタイミングでいきなりアリーナというのが非常にスピッツらしいと思います。
なんでこのタイミングで?と思わせた時点でスピッツの術中に嵌まっているわけで、ライブ中に当人達はチケットの売れ行きを心配するようなMCをしていましたが、福岡で半年の間に5公演も行うこと自体が確信犯的だし、その辺の自分たちの自力を試しながらも決して見誤らない、独立独歩なスタンスこそがスピッツのスピリッツなのではないでしょうか。元々、武道館ではやらないという発言をしていたのもアンチテーゼであるわけで、格好つけてやらないというテーゼを自らこのタイミングで壊しにきたのも実にスピッツらしいと思います。
さて、肝心のライブの内容ですがアリーナの空間を上手く利用した演出が満載で、当然ですが自分が見てきたスピッツのライブの中でも一番大がかりで凝った演出になっていました。幸い2階席中央の前列で見ることができましたので、演出効果を含めてライブの全体像を楽しむことができました。ライブを見ながら思い続けたのは、スピッツの多彩な楽曲がまるでカードのように次から次へと切り出されていくなということで、ヒット曲やシングル曲でもない曲がライブのハイライトを何度も何度も演出し、むしろ一般的なスピッツのヒット曲はライブ中には箸休め的な役割を担っているという事自体がスピッツの特異性を表していると思います。その辺は最新作である『小さな生き物』のシングルではない楽曲が、既にライブの中核を担いだしていることからも如実にうかがえますし、この一切ブレないスピッツの楽曲の強靱さにはいつも驚かされます。スピッツが持つ多彩なカードはその揃え方によって様々な表情を見せてくれるし、そのカードの並び方によるセットリストの妙が、素晴らしいライブを形成する大きな要素になっていると思います。
兎にも角にも、自分の音楽の原体験や価値観を再確認できるスピッツのライブの存在は大きいわけで、ライブが終われば自分も筑紫野の空を飛び回れるような気になれるそんなライブ。約束しなくてもまた会えると思っています。

魔法のコトバ

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