Mc Larsが『This Gigantic Robot Kills』で聞かせるMc Lars節

Mc Larsの待望の新作『This Gigantic Robot Kills』が相変わらずのMc Lars節で到着したのでご紹介。自分は前作『The Graduate』に収録された「Download This Song」Bowling For SoupJaret Reddickが参加していた事がきっかけで購入していたわけですが、国内盤も発売されたものの日本ではそれ程盛り上がる事無くスルーされた存在だったと思います。個人的には白鯨をモチーフにし、Superglass「Moving」をサンプリングした「Ahab」が大好きでクラブイベントでも流したりしていましたが、イマイチ流行らせる事が出来なかったのを悔いていたところに、今回の新作『This Gigantic Robot Kills』が発売されたわけでして、Lyme-Recordsとしてもリベンジを期して強力にプッシュしていきたいと思っています。
今作『This Gigantic Robot Kills』でも前作「Ahab」の様な異様にセンスが良いサンプリング(今作では生演奏でサンプリングしている)と切れの良いリリックは健在で、ラップトップラッパーと呼ばれる新世代ラッパーとして面目躍如なアルバムに仕上がっています。相変わらずMc Larsはラップと歌のヴァースとのバランス感覚が素晴らしく、ラップの入ってくるタイミングが気持ち良すぎるわけですが、これはその節回しと合わせて、センスというか天分の才だと思います。
『This Gigantic Robot Kills』は前作同様、様々なロック畑のアーティストがゲストとして参加していますが、前作に比べるとハードなロックサウンドは控えめになっており、バックトラックはどちらかといえばポップなバンドサウンドに近づいている為、全体的に風通しが良い作品になっています。ゲストが全面的に参加する方法論は正にヒップホップのアーティストが取るものと同じで、Mc Larsがロックというジャンルにカテゴライズされるかは置いておくとしても、ロック畑の人がこの様な形で全面的に参加している極めてロック色の強いラッパーアルバムは過去に見られなかった様に思います。その意味では前作『The Graduate』こそが革命的だったのかもしれませんが、今作ではバックトラックとラップの融合度が高まっている為、アルバムとしてより強固な統一感が生まれています。
さて個々の楽曲に関してですが「True Player for Real」ではオバマ支持を訴えた「Change The World」という楽曲で共演していたWheatusBrendan Brownも参加し、Wheatusらしいバックトラックに、素晴らしいコーラスを聞かせており、加えて"Weird Al" Yankovicアコーディオンを奏でるという奇跡の共演を果しています。アルバムタイトルにもなっている「This Gigantic Robot Kills」ではSuburban Legendsがフューチャーされ、スカサウンドとも融合を果しているのですが、スカ+ラップの手法自体は珍しくなくても、Mc Larsのラップが乗る事で風通しが良いサウンドとしてアルバムの中でも突出してポップな仕上がりになっています。「Twenty-Three」では今年ソロアルバムが出る予定の James BourneSon of DorkBusted)が参加し、打ち込みのサウンドにコーラスを添えているのですが、これが実にWheatusの影響を受けたかの様なキラキラした楽曲のイメージで、Son of Dorkのアルバム『Welcome to Loserville』へのBrendan Brownの参加が好影響を与えた事も窺い知れ、ソロアルバムにも期待が出来る楽曲になっています。「Guitar Hero Hero (Beating Guitar Hero Doesn't Make You Slash)" 」ではNerf HerderParry Gripp、そしてPaul Gilbertと共演しており、「愛しのヴァン・ヘイレン(原題はVan Halen)なんて楽曲をヒットさせたNerf Herderをこの曲で現存するギターヒーローと競演させるなんてニクイ限りであります。他にも、Jonathan CoultonPierre BouviereSimple Plan)、Brett AndersonSuedeじゃなくてThe Donnasね)、Linus Of Hollywoodなどなどロック畑に限っただけでも多彩なゲストが参加しているわけでして、他にもAtom & His Packageのカバーがあったりと、とにかく聴きどころが多いアルバムになっています。またこのアルバム自体がWesley Willisに捧げられているわけでして、この辺に関しては、お馴染みのThe Muffs’ Fanpage In Japanさんに詳しく記載(2/26、2/28の記事)があるのでぜひ参照して頂きたいと思います。
とまあ、ダラダラとまとまりが無く書いてしまう程『This Gigantic Robot Kills』は盛り沢山なアルバムであるので、ぜひぜひ手に取って聞いて貰いたいと思います(もちろんこの曲をダウンロードでも良いわけだけど)。

This Gigantic Robot Kills

This Gigantic Robot Kills

フロアでも大盛り上がり必至のMC Lars "Guitar Hero Hero (Beating Guitar Hero Doesn't Make You Slash)"