Free Energyの『Stuck On Nothing』が魅力的でクレバーな理由

Free Energy『Stuck On Nothing』を薦められて購入。ちゃっかりとご紹介したいと思います。Free Energyが話題になっているのはDFA Recordsからの発売で、プロデュースもJames MurphyLCD Soundsystem)が務めているという事が大きくて、パワーポップリスナーだけでなく大きな広がりを見せているのだと思います。確かにロックンロールの大仰さを取り入れながらも、上手くポップに消化したパワーポップサウンドFree Energy最大の魅力ではあるのですが、James Murphyの手腕によって異様にサウンドの分離が良く仕上がっており、その辺の近代的な音処理(カウベルが印象的だったり、いかにもDFA的な部分もあり)との対比が非常に面白いバンドだと思います。
あと一歩メロディの質が高まり、幅が出ればと思う節もあるのですが、全体を通してポップなメロディが印象的で、どの楽曲も強力な楽しさと瑞々しさに溢れています。オープニングからギターが鳴りまくりの「Free Energy」、コーラスが楽しいグラムな「Dream City」、タイトル通りリズムが弾む「Bang Pop」、ミドルテンポでギターとストリングスとの絡みも上手くはまった「All I Know」と前半は申し分ない展開。後半は若干間延びする面もありますが、いかにもエンディング的な最終曲の「Wild Windsを含めてFree Energyはアルバム『Stuck On Nothing』の中で十分なポテンシャルを発揮しています。
様々なバンドが比較の対象に上がっているFree Energyですが、サウンドの成り立ちはWheatusにも近いといえなくも無いです。もちろん、インプットしているサウンドとアウトプットしているサウンドは若干違っていて(どちらかと言えばFree Energyは70年代のハードロック、Wheatusはハードロックを含めた80年代全般のサウンドの影響が強い)、Free EnergyサウンドWheatusからの直接的な影響は受けていないと思うのですが、絶対にメンバーはWheatusのアルバムを聞いた方が良いのにと余計なお節介を焼きたくなる様なサウンドに仕上がっていますので、Wheatus好きな方もぜひどうぞ。インタビューを読む限りこのサウンドを非常に意識的に作り上げている感もあるので、基本的にクレバーなバンドだと思うし、期待出来る今後を見守っていきたいと思います。

Stuck on Nothing

Stuck on Nothing

B級学園映画風で無駄にお色気のあるPVは必見。サマソニでライブも見たい。