Kanye Westの『808s & Heartbreak』は愛あるポピュラーミュージックに成り得たのか?

Kanye Westさんの新譜『808s & Heartbreak』の新境地が意外に違和感無く良かったのでご紹介。

蟹江さんといえば、名実共にトップのラッパー&プロデューサーなのですが、新作ではラップを捨てて思いっきり歌っている為、賛否両論が巻き起こっています。更にKanye Westの代名詞でもある大ネタ使いのサンプリングも減少し、あくまでもオリジナルトラックをシンガー蟹江が歌い上げるという構成でアルバムは進行していくのですが、意外や意外、これが成功しています。正直Kanye Westの歌が上手いかどうかといえば否なんですが、良い見方をすればヘタウマだけど味があってソウルフルといった感じです。ヴォコーダーで声に思いっきり加工してあるのは、恐らくT-Painからの影響が大きい(これはPerfumeの影響だとかいってみたいけど)と思うのですが、メロウな楽曲にマッチしていると思うので今作に関しては上手く嵌っているように感じます(そしてそのT-Painもソングライティングで参加している「RoboCop」が個人的にはベストトラック)。
今回の『808s & Heartbreak』という作品は、Kanye Westがサンプリングする側からされる側のオリジネーターとしてのアーティストになれるのかの分岐点ではあるのですが、何よりも前作までのアルバム三部作を完結させ、新たに徹底した方向性を打ち出した事は評価されるべきだと思うし、その作品の発表ペースを考えてもKanye Westの評価を下げるものには決してなっていないと思います。まあKanye WestR. Kellyみたいになっていくかといえば、それは想像し難いので、歌モノの路線をどこまでやっていくかというのは分からないですが、意外と他人の評価を気にしてしまうKanye Westだけに、『808s & Heartbreak』に対する世論次第なのではないでしょうか。そして、『808s & Heartbreak』がポピュラーミュージックに成り得たのか?という判断もリスナーに委ねられてしまうのですが、『808s & Heartbreak』が愛に溢れた作品(と同時に愛に飢えた様な作品)である事は間違いありませんので、アーティストのイメージに囚われずに一度聞いてみて欲しいものです。

808sと聞いて808 Stateが思い浮んだんですが、やっぱりRoland TR-808から取っているようで。

808s & Heartbreak

808s & Heartbreak

Kanye West - Love Lockdown