oasisの『Dig Out Your Soul』は『Revolver』に成り得たのかという疑問を解決してみる

という事で、早速oasis『Dig Out Your Soul』の感想でも。
しっかりと腰を据えてヘッドフォンで聴いた第一印象は、oasisにしてはサウンドのアレンジやプロダクションが凝っているなといった印象。なぜ彼らがKasabianにシンパシーを感じるのかが初めて良く分かった。身も蓋もない言い方をすればoasisの影響を受けたKasabianが次作辺りでやってもおかしくないサウンド。でも全く従来のoasisでは無いかと言うとそうとも言えなくて、目立った大サビを敢えて排除しているだけで基本的なメロディはやっぱりoasisのそれでしかない。
ヘッドフォンで聞くと良く分かるのですが、今作には今までの作品には無いほど様々な音の要素を詰め込んであって、Noel Gallagherが言う通り体感できる音楽である事は間違いないと思うし、oasisの歴史上で最大の意欲作である事も間違いない。しかしグルーヴを前面に出したというほど特にリズムパターンも新しくはないし、手垢だらけの手法とどこかで聞いた事のあるサウンドの再構築といっても過言ではない程、革新的な音楽では無いと思う。だけど、それにも拘らず『Dig Out Your Soul』が想像以上にファンやプレスに歓迎されているのは、結果的に一番ソウルの篭ったアルバムになったからだ。それはGallagher兄弟のボーカルの出来が秀逸な事に依る部分も大きいけど、バンド自体が渾然一体となって新しいoasisを生み出そうともがき続けた結果生み落とされた一枚岩のサウンドから、単純なリズムやビートで計りきれないグルーヴを感じる事が出来たからではないだろうか。
もう『Definitely Maybe』『(What's the Stor)Morning Glory?』と比較する事自体が馬鹿らしいというか、無駄な事のように思えるほどバンドは長く続いているわけで、今後Noel Gallagherがアンセム的な楽曲を書かなかったとしても不思議では無いし(本人もその気は全く無いだろうし)、自分も今のoasisにはそんな事は期待していない。ただ、Beatlesが七枚目のアルバムで『Revolver』を届けてくれたのと同じ様に、oasis『Dig Out Your Soul』を届けてくれたという事だろう。『Standing on the Shoulder of Giants』サイケデリックをなぞった従来のoasisのアルバムだとするならば、『Dig Out Your Soul』は本物の新生oasisだ。Beatles『Revolver』一発で作り上げた(『Rubber Soul』を経てという考え方も出来るが)けど、oasis『Standing on the Shoulder of Giants』『Heathen Chemistry『Don't Believe the Truth』を経て、パブリックなoasisとの妥協案を探り回り道をしながらようやくそれを作り上げたのだと思う。

その様な意味でも『Dig Out Your Soul』はそのタイトルに紛う事なきソウルアルバムだ。

そしてあとoasisに成し得てない事があるとしたら、それはダブルアルバムだ。4人のソングライティング能力の旬が過ぎないうちにWhite Albumを作る事が出来れば、oasisにはもう何も文句は言えない。

〜蛇足〜
日本盤のボーナストラックであるI Believe in All」Liam Gallagherのソングライティング能力の向上を感じさせる突出した良曲だけど、このアルバムには入んなくて当然なのでこの扱いで良いかと。
あと「The Turning(Alternative Version)」「Lyla」を聴き比べて、本編の「The Turning」を聴くと『Dig Out Your Soul』の本質が見えてくるのではないでしょうか。

結局amazonでも発売するのならオフィシャルの販売はなんだったんだという気持ちはグッと堪えて。

Dig Out Your Soul (Super Deluxe 2 CD/DVD/4*Vinyl Boxset)

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