The Charlatansの『Who We Touch』に息づく80年代とCharlatansサウンド

The Charlatans11枚目のアルバム『Who We Touch』が発売されたのでご紹介。
90年にデビューして20年の間に11枚のアルバム発売ですので、リリース期間を空ける事無く精力的に活動を続け、UKのバンドの中ではかなり息の長いベテランバンドになったCharlatansですが、最新作『Who We Touch』では、またもや新しい境地を披露してくれています。前作『You Cross My Path』が思いっきりNew Orderな80年代のサウンドCharlatansを掛け合わせた様な内容で、フリーダウンロードを積極的に取り入れたりと、内容、販売方法共に意欲的な作品だったわけですが、今作『Who We Touch』は洗練された多彩なサウンドで、前作とは異なった路線でアルバムを展開しています。今作のプロデュースはYouthことMartin GloverKilling JokeThe Fireman)で、Primal ScreamThe VerveEmbrace等のUKバンドを手掛けた(ちなみに来年初頭に発売予定のThe Viewのサードアルバムも彼がプロデュースとの事)実績のある人なので、ボーカルのTim Burgessが「ヨーロッパの冬のようなサウンドにして欲しい」と希望を出した事からも分かる様に、非常に手堅くアルバムイメージをサウンド化出来る人選で、結果的にこの人選は上手くいっている様に感じます。
人選でいえば隠しトラックの「I Sing The Body Eclectic」には70年代終わりから80年代を中心に活動したアナーキーなパンクバンドのCrassPenny Rimbauldを招き、雰囲気たっぷりのポエトリーリーディング風のボーカルで参加させているのも印象的で、同じくCrassGee Vaucherにはジャケットのデザインを依頼していたり、 レコーディング自体もBritannia Rowという、The CultJoy DivisionNew Orderも使用したスタジオでレコーディングされていたりと、非常に徹底しています。この事から、前作からサウンドやコンセプトを変化させたというより、80年代を忠実に再現するかの様な一連の流れの下で今作も製作されている事が分かり、Charlatansの80年代の音楽に対する深いリスペクトと、スピリットがサウンドに宿った様なアルバムに『Who We Touch』は仕上がっていると思います。
先行シングルとなった「Love Is Ending」ではいきなり大音量のギターからの展開に意表を付かれるものの、続く「My Foolish Pride」「Youre Pure Soul」Smash The System」とメロウな楽曲の流れがあり、「Sincerity」の様にCharlatansらしいキーボードがアップテンポで畳み掛ける様な楽曲もあり、ギターサウンドからエレクトロサウンドまで、縦横無尽にカラフルにアルバム内を駆け巡る印象です。確かに全体を通せば、いかにもCharlatans的なある意味分かり易いメロディは従来より陰を潜めているものの、洗練されたサウンドなのにどこか暖かく仕上がっているのは流石だし、Tim Burgessのボーカルはいつも以上に優しげで、Charlatansらしさはしっかりと楽曲の中に息づいていると思います。
国内盤は最近洋楽のカタログも充実してきているインペリアルレコードから。
2枚組みの限定盤には アーリー・バージョン、アウト・テイクなど収録されているのですが、これが思いっきり完成度が高く、このままリリースしても遜色ないレベルの仕上がりです。でもこのアウトテイク集は、レコーディングしているのがBritannia Rowでは無くて別のスタジオがほとんどで、すでに完成に近い状態であった楽曲群を敢えてBritannia Rowでレコーディングし直している事になります。つまりCharlatansBritannia Rowでレコーディングする事に意義を見出していたと考えるのが自然で、その辺から考えてもCharlatansのアルバムの世界観の構築に対する強い拘りを感じる事が出来る訳で、この辺はやっぱり信頼出来るバンドだなと心より思います。

フー・ウィ・タッチ

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