Paul Collinsの『King Of Power Pop』の教科書的でBeatles的な内容

Paul Collins『King Of Power Pop』という思い切ったタイトルでアルバムを発売したのを記念してレビューを。
Paul CollinsといえばThe NervesThe Breakaways、そしてThe Beatとして活動してきたアーティストで、今回のアルバムタイトルからも分かる通り、パワーポップというジャンルを聞いてきたリスナーであれば、一度は耳にした事のある名前だと思います。今作『King Of Power Pop』Jim Diamondがプロデュースを務め、デトロイトの人脈を中心に、Paul Collinsを敬愛する若いレーベルメイト(今作はAlive Recordsからの発売)も多数参加しているのですが、他にもThe RomanticsWally PalmarNikki Corvetteという思わずニヤリとする様なメンバーもゲストとして名前を連ねており、賑やかな一枚に仕上がっています。
『King Of Power Pop』は基本的にはパワーポップサウンドなのですが、どちらかといえばそのルーツになるようなマージービートが全開の60年代のテイスト、はっきりといえばThe Beatlesの要素が強く滲み出ており、画一的なパワーポップサウンドにはなっていません。Nikki Corvetteのボーカルも印象的でRamonesの様に楽しい「C'mon Let's Go!」でアルバムは幕を開け、Wally Palmarが参加したハーモニカが鳴り響く「Do You Wanna Love Me?」から、最もパワーポップサウンド「Doin' It For The Ladies」へ雪崩れ込み、そして、中盤に差し掛かる「Many Roads To Follow」ではコーラスといい、シャウトといい完全にBeatles直系のものだし、続く「Losing Your Cool」「Off The Hook」の楽曲も60年代のBeatles風で、アルバムの中盤では完全にThe Beatlesなアルバムと化しています。そして、アルバムの後半では「This Is America」を筆頭に骨太なサウンドが耳に残り、パワーポップのもう一つの表情であるハードな一面も聞かせてくれていますので、全体を通してアルバムを聞く事で、パワーポップのルーツミュージックを一通り感じられる教科書的な一枚に『King Of Power Pop』が仕上がっているのが非常に印象的です。まあ実際に表題曲でもある「Kings Of Power Pop」という楽曲ではBeatlesRolling Stonesという歌詞も出てきますので、Paul Collinsはこの辺は意識的にやっているのではないかと思われます。
過去のThe Beatサウンドを聴いていると、個人的にはThe Whoの影響が強いのかなと感じていて、もちろんThe Whoパワーポップのルーツともいえる存在なのですが、今作『King Of Power Pop』に関しては、Beatlesの影響下にあるサウンドがアルバムの中心を担っていますし、強引にレビューを結ぶならばBeatlesこそがパワーポップのルーツだといわんばかりの一枚に仕上がっていると思いますので、パワーポップリスナーに限らない多くのリスナーが楽しめる一枚だと思います。
ジャケに関してはノーコメント。

King Of Power Pop!

King Of Power Pop!

プロモーション動画ですが素敵なPaul Collins