The Posiesの『Blood/Candy』が作り上げた甘くも繊細な掛け値なしの一枚
The Posiesのニューアルバム『Blood/Candy』が発売になっているのでご紹介。
Posiesの7枚目のアルバムになる『Blood/Candy』は、前作『Every Kind of Light』から5年振りという長いスパンを経て発売されました。元々Posiesは一度解散し、7年振りの復活アルバムとして『Every Kind of Light』が発売されていたので、ファンにして見れば心待ちにしていたニューアルバムだと思います。
『Blood/Candy』は前作『Every Kind of Light』が、パワーポップサウンド全開というよりも若干落ち着いていたアルバムだった事に比べると、従来のPosiesの魅力である素晴らしいパワーポップサウンドが蘇ってきているのが印象的で、古参のリスナーにも歓迎されるサウンドに仕上がっていると思います。とはいっても、『Blood/Candy』はパワーポップサウンド以外にも様々なサウンドの要素も溶け込んでおり、Posiesが音楽的にも成熟した事を感じさせる内容になっています。一曲目の「Plastic Paperbacks」はどこかリズムがローファイな雰囲気を持ちつつも懐かしさを感じる不思議な楽曲で、いきなりの新境地を感じるのですが、「The Glitter Prize」、「So Caroline」、「Notion 99」などの様にパワーポップサウンドを下敷きにしながらも、メロディに力を持った楽曲も数多く収録されています。 また、構成の妙がある「For The Ashes」は「Let it be」や「Strawberry Fields Forever」の雰囲気を持ちながら「The Continuing Story Of Bungalow Bill」を思わせる様なメロディが飛び出す、Beatles影響下の楽曲で、他にも「Holiday Hours」の様にメロディとコーラスワークを存分に聞かせるミディアムな楽曲があり、最終曲のモーグが印象的で清涼感のある「Enewetak」まで、非常に幅広くクオリティの高い楽曲が収録されています。
また、今作『Blood/Candy』にはゲストボーカルで「The Glitter Prize」にはLetters to CleoのKay Hanley、「Licenses to Hide」にはBroken Social SceneのLisa Lobsinger、「Plastic Paperbacks」には元StranglersのHugh Cornwell、「Enewetak」にはPaco Locoが参加しており、それぞれのボーカル自体が前面に押し出されている訳ではないのですが、幅の広いゲストボーカル達を起用した事で、アルバムの風通しは非常に良くなっていますので、この試みも非常に上手くいっていると思います
そして、『Blood/Candy』は全体を通してBeatlesからのダイレクトな影響が感じられ、Beach Boysを髣髴させる透明感のあるコーラスワークや綿密な楽曲の構成もあって、非常に普遍的なポップアルバムに仕上がっていると思います。この事で『Blood/Candy』は掛け値なしにキャリア最高の一枚に仕上がっていると思いますし、12年の間に3枚のアルバムしか発表していないPosiesではあるのですが、次回作が今から非常に楽しみです。
- アーティスト: Posies
- 出版社/メーカー: Rykodisc
- 発売日: 2010/09/28
- メディア: CD
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (2件) を見る