Fountains Of Wayneが『Sky Full of Holes』で響かせるギターと辿り着いた場所

Fountains Of Wayne『Sky Full of Holes』が素晴らしい作品に仕上がっていたのでご紹介。
Fountains Of Wayne待望のニューアルバム『Sky Full of Holes』が発売になりました。『Sky Full of Holes』Fountains Of Wayneの5枚目のアルバムになりますので1996年からのそのキャリア考えるとリリースペースは速くは無いものの、しっかりと地に足が着いた活動を続けている貴重なバンドだといえると思います。まず、今作『Sky Full of Holes』は今までのアルバムに比べると、非常に地味です。基本的にFountains Of Wayneのアルバムはアルバムの顔になる様な飛びぬけてキャッチーな曲が強烈に耳に残る一方、アルバム全体でシッカリと聞かせるというタイプの作品ではなかった様に個人的には感じていて、そんな中、前作『Traffic and Weather』「Someone to Love」の様なダンスナンバーもあり煌びやかな印象が残るのですが、実はアコースティック主体の良曲も多く、幅広いタイプの楽曲が収録されたアルバムであり、楽曲の全体のクオリティでいえば、過去最高の作品に仕上がっていたと思います。そして今作『Sky Full of Holes』も、全体の楽曲のクオリティが高く、派手さは無いもののメロディに重きを置いた楽曲群が素晴らしく、アコースティックギターが印象的に使用され、抜けの良いギターサウンドが非常に爽快な仕上がり(少なくとも自分が聞いた2011年発売のギターサウンドの中では一番。)で、シンプルなギターの音色に拘る事でメロディの良さが一層際立っており、シンプルなサウンドながら、これまで以上に非常に丁寧に作りこまれた作品だという印象を受けます。
アルバムは爽やかなFountains Of Wayne色満載の「The Summer Place」で幕を開け、キュートなメロディのポップソング「Richie and Ruben」、思いっきりBeatles的なギターサウンドを取り入れたAcelaへ続き序盤から畳み掛けるような流れで(これはFountains Of Wayneのアルバムの全てにいえる事なのですが)、中盤からも素晴らしいメロディをシッカリと聞かせる「Someone's Gonna Break Your Heart」「Action Hero」「A Dip in the Ocean」でアルバムが引き締められており(特に「Action Hero」の歌詞はちょっと泣けますね、映画の挿入歌なんかにピッタリ)、この辺の中盤の流れも秀逸です。そして中盤以降は落ち着いたテイストの曲が中心で、地名が次々に耳に飛び込んでるラブソングの「A Road Song」、カントリー調でいかにもChris Collingwoodらしい「Workingman's Hands」などシンプルながらも良いメロディの楽曲が続きます。さらに何といっても11曲目に一番に弾けた瑞々しいポップソングの「Radio Bar」が収録されているのが素晴らしくて、アルバムの終盤までワクワクしながら聞けるという今までのFountains Of Wayneには無かったアルバムの構成だと思います。そしてタイトル通りのワルツがジワリと染みる「Firelight Waltz」、物悲しい最終曲の「Cemetery Guns」でアルバムが幕を下ろすまで、アルバムの流れとしてはほぼ完璧な流れなのではないかと思います。
あと、あらためて『Sky Full of Holes』で感じる事は、Chris Collingwoodの脱力感のあって愛おしいくせに聞き取りやすいボーカルが唯一無比のものだという事で、ソングライティングを含めた創作面でも『Sky Full of Holes』Chris CollingwoodAdam Schlesingerとのバランスが取れており、今まではプロデューサー業もこなし様々なアーティストに楽曲提供しているAdam Schlesingerにスポットライトが当たる事が多かったFountains Of Wayneですが、これこそがFountains Of Wayneのアルバムだといえる彼等の代表作に仕上がったと思います。全ての音楽リスナーにお勧めしておきます。名盤。

Sky Full of Holes

Sky Full of Holes

一応「Someone's Gonna Break Your Heart」がシングルの様ですが、アルバムでこそ聞いて欲しい作品。