The Feelingの『Together We Were Made』で楽しめる圧倒的なボリュームと思い切った構成

The Feeling『Together We Were Made』が到着!という事で聞き倒しています。今作は『Together We Were Made』以前も記事にした通りSophie Ellis-BextorRóisín Murphyに加えてボーナスディスクではBetty Booフューチャリングしている事からも分かる通り、ポップミュージックとダンスミュージックを大きく意識した作品になると思っていたのですが、Feelingは想像を超えるクオリティで届けてくれました。
アルバム全編を通して異常に臨場感のあるクリアなサウンド『Together We Were Made』は構成されているのですが、前半が80年代の要素が散りばめられたダンスチューンや電子的なサウンドが中心、後半がFeelingのもう一つの魅力であるバラードを軸にギターやピアノが印象的に響くロック的なアプローチの楽曲が並ぶというハッキリと二分された構成になっており、非常に分かりやすい思い切った構成になっています。『Together We Were Made』は先行シングルにもなっていたメロウでサビのメロディが印象的にリフレインされる「Set My World On Fire」で幕を開けるのですが、その後はアップテンポなダンスチューンが中心で、Róisín Murphyがボーカルで参加している「Dance For The Lights」Sophie Ellis-Bextorが参加した「Leave Me Out Of It」は昨今のイギリスのサウンドシーンを意識した様なダンサブルなアプローチで、ご両人の特性を活かしつつバンドであるFeelingと融合した楽曲は新鮮さを感じます。また「Searched Every Corner」の様に完全にダンスチューンに振り切った様な楽曲も印象に残るのですが、アルバムの前半と後半を繋ぐ「A Hundred Sinners (Come and Get It) 」というトラックが、クラシカルなポップミュージックに現代的なサウンドを上手く消化したFeeling流のポップソングに仕上がっていて、この名曲が中央に配置されている事で『Together We Were Made』の軸としてしっかりと機能している様に感じます。そして、アルバムの後半はFeelingが得意とするバラードが印象的に配置されており、名曲「Rose」を思い起こさせる様な「Say No」と畳み掛けるピアノと「ヘイヘイヘイ」の掛け声が楽しい「Another Life」などは出色の出来だと思います。
『Together We Were Made』を聞いていると『Twelve Stops and Home』サウンドからは随分変化を遂げたように感じますが、セカンドアルバム『Join With Us』では過渡期だったダンスチューンとの融合という面では一応の完成形を見たように感じます。確かに『Twelve Stops and Home』の楽曲群に比べるとメロディのフックという意味では劣ると思うのですが、Feeling最大の魅力である全体を通してのメロディのクオリティとハーモニーの素晴らしさは健在で、どうしてもアルバム前半のサウンド変化に耳を奪われますが、トータルクオリティという面ではかなり高い作品だと思います。2枚組のリミテッドエディションには全曲新曲の12曲が収録されており、こちらは事前に予想した通り、シングルのカップリング集という印象ですので、アルバムとして聞くと散漫ではあるのですが、個々の楽曲のクオリティは高く、聞きどころも多いです。特にBetty Booが参加した「Virtually Art」はダンスポップの佳曲だし、続く「Care About Us」ウェスタン風のサウンドが飛び込んでくる楽しいポップソング、「Colder Than December」なんて折り重なるボーカルが壮大で、まるで本編の最終曲であっても違和感の無い楽曲で、統一感を損なうという意味でアルバムに未収録な理由は分かるとはいえ、アルバムに収録されなかった事が勿体無いと思える楽曲も多く収録されているので、ぜひリミテッドの方をご購入頂いて圧倒的なボリュームを楽しんで頂きたいと思います。
そういえば今作『Together We Were Made』はNMEなどでは★1つという低評価で、チャートの順位も前作『Join With Us』がチャートの1位だった事に比べると今作は22位ですので苦戦しているといえるでしょう。でも今作でFeelingが目指したUKの伝統的なメロディ+近代的なダンスチューンというのはTake That『Progress』の様な爆発的な支持を集めたモンスターアルバムにも通ずる部分で、その辺を引き合いにして語られないと駄目なのではないかと思いますし(Take That『Progress』のボーナスディスク的な『Progressed』を発表した事ですしね)、的外れに貶める労力は別のところに使っていただきたいところ。

Together We Were Made: Deluxe Edition

Together We Were Made: Deluxe Edition