Ben Foldsの『Lonely Avenue』で描かれた人物像と暖かさ

珍品CDとして到着したBen Folds『Lonely Avenue』ですが、無事に交換してもらったのでレビューを。
おさらいをしておくと今回の『Lonely Avenue』という作品は「ハイ・フィデリティ」「アバウト・ア・ボーイ」「17歳の肖像」などで知られるイギリスの作家Nick Hornbyの歌詞にメロディをつけた作品。ですので純粋なBen Foldsの作品というより、あくまでもコラボレーションアルバムとしてカウントするべきなのかもしれませんが、その内容はいつものBen Foldsの作品に通ずる温度とクオリティが息づく作品に仕上がっていました。
具体的なサウンドで言えば、いつものBen Foldsに比べるとピアノを全面にフューチャーした楽曲が影を潜めている印象で、「Saskia Hamilton」様にシンセサイザーが飛び回るロックなアプローチの楽曲や、「Working Day」から「Picture Window」の流れの美しさ、同じシンセサイザーでもアクセントとなり疾走感を持たせた「From Above」など、アレンジに力を入れた楽曲が深く印象に残ります。『Lonely Avenue』は全体的には落ち着いたアプローチの作品ではあるのですが、個々の楽曲やアプローチ自体はバラエティ豊かな仕上がりになっており、11編の短編集の様でコンピレーション的な印象を受けますので、この辺にコラボレートした意味合いがハッキリと出ていると思います。また、Ben Foldsがレコードで聴く事を想定してレコーディングされたそのサウンドは、どこかアナログ的な暖かみがあり、様々なサウンドが一枚のアルバムに収録されながらも統一感を持たせる事に一役買っています。
『Lonely Avenue』サウンドだけでなく当然Nick Hornbyが書いた歌詞が大きな要素になる訳ですが、自分は輸入盤を購入した為に断片的にしかレビュー出来ないのが残念。それでも「Levi Johnston's Blues」の様に実在の人物(Levi JohnstonSarah Palinの娘との間に子供を作りながら婚約→解消を繰り返したお騒がせ男)を題材にした楽曲があったり、「Practical Amanda」「Saskia Hamilton」「Belinda」とタイトルに人物にフューチャーした曲はもちろん、「From Above」の様に固有の人物が登場する楽曲が多い事で、『Lonely Avenue』の持つストーリー性が高まっていますし、やはり歌詞の占めるウェイトの高い作品だと思います。あとこれは完全に蛇足になりますが「Belinda」の後にBen FoldsPaul McCartneyの物真似をしているトラックが収録されていて、Paul McCartneyのシャウトの雰囲気を上手く真似ており非常に微笑ましいです。
という事で国内盤を買わなかった事を少し後悔しているので、歌詞を楽しみたいのであればやはり『Lonely Avenue』は国内盤がお勧めなのかと。