Josh Ritterの『So Runs the World Away』はレコードが似合う一枚

Josh Ritterの6枚目のアルバム『So Runs the World Away』が発売されていたのでご紹介。
前作『The Historical Conquests of Josh Ritter』が2007年発売だったのでJosh Ritterにしては少し間が空いた感もありますが、安定してアルバムを発表し続けているのが非常に好感が持てます。さて、肝心の内容ですが前作『The Historical Conquests of Josh Ritter』が非常にとっつきやすい作品だったのに比べると、『So Runs the World Away』は落ち着きと深みが増したフォークサウンドが基調で、トラッドソングの「Folk Bloodbath」をカバーしている事からも分かる通り、トラッド色も強まった作品に仕上がっているので、少し地味な印象を受けるかもしれません。前作がJosh Ritterの集大成的なアルバムだったとしたら今作『So Runs the World Away』は、Josh Ritterサウンドをより深化させた内容ですので、好みは分かれるかもしれませんが初期からJosh Ritterを聞いている古参のリスナーにしてみれば、嬉しい仕上がりだともいえるでしょう。Bob Dylanになぞられることの多いJosh Ritterですが、個人的にはBruce Springsteenからの影響も強いと以前より感じていて、今作ではバンジョーや管楽器の要素が印象的で、トラッド色が強まった事でその傾向も分かりやすく滲み出ていると思います。
アルバムがこの様な変化を果したのは、Josh Ritterが2009年に今作にもコーラスで参加しているDawn Landesと結婚した事とも深く関係している様で、新たな環境や心境の中で作品に取り組んだ事が、一歩先に踏み出した様な作風に繋がっていると思いますし、非常に自然な作品の変化だと感じます。ちなみに『So Runs the World Away』アメリカではRecord Store Dayである4/17にアナログ盤が先行発売されていたのですが、メランコリックながらも暖かみのあるそのサウンドはアナログレコードがシックリとくる様な作品に仕上がっている事も今作の大きな特徴だと思います。
『So Runs the World Away』Billboardのチャートで41位を記録し(フォークアルバムチャートでは見事1位)、世界的には盛り上がりを見せてきているものの、ここ日本での認知度は恐ろしいほど低いです。シェイクスピアの『ハムレット』から取ったというそのアルバムタイトルや、自身でも小説を執筆している事からも分かる通り、ストーリーテラーとしての才能も持ち合わせているJosh Ritterだけに歌詞対訳の付いた国内盤の発売を期待したいと思います。

So Runs The World Away

So Runs The World Away

ドラムで参加しているLiam Hurleyが製作したこのビデオもワルツと寄り添うような世界観で面白い出来。