Snow Patrolが『Up to Now』で見せたベストなバランスと安定感

先日Gary Goを取り上げたのでSnow Patrolのベスト盤『Up to Now』も取り上げておきます。
Snow Patrolといえばパッとしなかった初期のインディーズ時代があって、サードアルバム『Final Straw』で一気にインディーズのギターロックファンを獲得したバンドだと思っていました。そのSnow Patrol「Chasing Cars」の大ヒットによって一気にスタジアムバンドにのし上がり、いつの間にかにサウンドのスケールが大きくなってしまう事で、インディーズ時代からのファンの多くを驚かせ、戸惑わせたバンドだと思います。個人的にも「Chocolate」という楽曲が好きで『Final Straw』は良く聞いたのですが、徐々に聴く頻度が下がってきていたバンドなのですが、今回のベスト盤『Up to Now』の発売を機に再考察してみたいと思います。
『Up to Now』全体を通して思った事はSnow Patrolというバンドの手堅さとレベルの高いソングライティングが目立つという事。決して派手ではないけれど、実に地に足が着いた楽曲群でベスト盤は構成されており、Gary Lightbodyの安定感のあるボーカルもあって、安心感のある楽曲ばかりが収録されています。ベスト盤を聞くまでは『Final Straw』から『Eyes Open』の落差が何だったのか分からなくて、突然変異的なものだと思っていたのですが、これは間違いでした。冷静に考えればインディーズでの2枚があるわけですから、『Final Straw』こそが転換期になった作品で、更にGary Lightbodyが理想とするサウンドを突き詰めたのが『Eyes Open』という事になると思います。また、Snow Patrolはメンバー自体も初期のメンバー構成からはガラリと変わってますし、当初3人組だったSnow Patrolから2005年にはGary Lightbody以外の初期メンバーは去っていますし(ただしドラムスのJonny Quinnは1998年には加入しており、活動期間は長く、初期メンバーに限りなく近い)、現在のラインナップである5人組へと増員する事で、サウンド自体の厚みや表現方法が変わってきたように思います。つまりGary Lightbodyの頭の中には理想とするサウンドが鳴っていて、そのサウンドを実現する為のメンバーが集まる事で、必然的に現在のサウンドに辿り着いたのではないかと思います。あとはJacknife Leeとの出会いも大きかったと思うのですが、サウンドが大きく変化したように感じる『Final Straw』から『Eyes Open』の両作は共にJacknife Leeがプロデュースを務めている事から分かる様に、やはりそこにはSnow Patrolの確固たる意思があったのだと思います。
スコットランドの有名バンドのメンバーが総参加のThe Reindeer Sectionという企画にしてもGary Lightbodyが中心となってレコーディングされている訳でして、Gary Lightbody自体は基本的にはインディーズ気質の人のはずだと思います。その辺の過去の活動と現在のSnow Patrolでの活動のコントラストやバランスは見事だと思います(そしてThe Reindeer Sectionの楽曲である「Cartwheels」もこの『Up to Now』に違和感無く収録されている)。
Snow Patrolは日本では実に地味な存在なのですが、実際には全世界で1000万枚以上を売り上げるビックバンド(ちなみに「Chasing Cars」ビルボードの5位を記録しておりイギリスのバンドではDuran Duran『Ordinary World』以来の快挙だそうで)なわけで、過小評価されたバンドといえます。今回『Up to Now』という2枚組のベスト盤では、Snow Patrolがヒットしている理由と隠れた凄みというものを感じる事が出来ますので、興味のある方はどうぞ。

Up to Now

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