Athleteの『Black Swan』が届けてくれた想定外のアニマル

Snow Patrolをレビューした勢いで、同じラインに括られがちなAthleteの最新アルバム『Black Swan』を取り上げてみる。
何を隠そう自分はAthleteがデビューした時からかなり期待をしていて、デビューシングル「You Got the Style」も気に入って購入していたという古参のリスナーではあります。デビュー時はフォーキーながらも微量のエレクトロな隠し味を持ったインディーズバンドという印象だったのですが、このバンドもSnow Patrolと同様に一気にイギリスでは人気バンドとなってしまいました。
セールスの推移を見てみると、デビューアルバム『Vehicles and Animals』がUKチャートの19位、そしてセカンドアルバムの『Tourist』が見事にチャートの1位を獲得。 サードアルバム『Beyond the Neighbourhood』が5位、今作『Black Swan』が18位になっています。今作では売上を落としているようですが、出す作品の全てがヒットを記録しており、デビュー時からは想像もつかないほどの躍進振りといえると思います。
という事で最新作『Black Swan』の肝心の内容にも触れていきたいと思います。前作『Beyond the Neighbourhood』がどちらかといえばアグレッシブで洗練されたサウンドだったのに比べると、かなり柔らかな音になっており、サウンド自体の暖かみが上昇しています。アルバムタイトルが『Black Swan』な事からも分かる通り、よりナチュラルな志向になっているといえ、都会的だった前作『Beyond the Neighbourhood』とはある意味対照的な内容になっています。思えばデビューアルバムも『Vehicles and Animals』というタイトルだし、その意味ではデビューアルバムに通ずる部分もあるし、ヒットシングルである「Wires」の様なバラードよりも、「Superhuman Touch」「The Unknown」の様にアップテンポで明るめなサウンドが耳に残るのが『Black Swan』の特長ともいえます。80年代を少しだけ意識した様なピコピコとしたシンセサイザーも効果的に機能しているし、メロディ自体も良質なものが多く、非常にバランスの良いアルバムに『Black Swan』は仕上がっており、セールスこそ落としておりますが、この路線変更自体は大歓迎です。
『Black Swan』(本来発生しない事柄、あり得ない物、常識では考えられなかった物などの代名詞にもなっている)のタイトル通り、あり得ないほどの成功を収めたAthleteは、想定されたサウンド以上の物を生み出そうと試行錯誤した事で、今回の様なサウンドに辿り着いた様にも思うし、結果的にそのサウンドが「うた」にスポットライトの当たるシンプルな作品に回帰しているのも興味深いです。
ジャケもアニマル色が全開。アコーステックなボーナスディスク付きの二枚組も出ているのでそちらを勧めておきます。

Black Swan (Bonus CD)

Black Swan (Bonus CD)

ちょっと早い気がするけど来年早々にベストが出るんですよね。
Wires: the Best of Athlete

Wires: the Best of Athlete