Sondre Lercheの『Heartbeat Radio』で戻ってきたストリングス

Sondre Lercheの5枚目のアルバム『Heartbeat Radio』
ノルウェー出身のSondre Lercheは若くしてその才能を発揮し、通算5枚のアルバムを発表しているにも関わらず、未だ27歳。デビュー作『Faces Down』ノルウェーでヒットし、一気にシンガソングライターとしての地位を確立してしまったSondre Lercheは、ノルウェーだけに留まらず世界中の音楽シーンで注目を集める存在になりました。
とまあ、短い文章にすると典型的なサクセスストーリーに聞こえますが、決して順風満帆かといえばそうでもないだろうし、ノルウェーからの発信という事もあって、やっぱり色々なハンデというか逆風もあったのではないかと思います。発表されてきた作品も、その表情を変えながら重ねられてきていますし、前作『Dan in Real Life』がラフなガレージらしささえ感じるようなロックアルバムになっていた事からも分かる様に、Sondre Lercheは才能の振り幅を最大限に発揮しながら進んできたように思います。そのSondre Lercheが今作『Sondre Lercheでは、一転して原点に戻ったかの様な美しいメロディを聞かせてくれており、前作とは対照的にストリングスの要素が強くなり、民族的なアプローチを見せながらもオーケストラル・ポップスな展開で『Heartbeat Radio』は進行していきます。
ドラマテックなストリングスが響く「Good Luck」、表題曲でもあるオーケストラル・ポップスの見本の様な「Heartbeat Radio」やカウントや女性コーラスの絡みが最高の「I Cannot Let You Go」など、冒頭から一気に畳み掛る展開で、美しく透明感のあるメロディにSondre Lercheのしなやかな歌声が乗る事で、最大限にSondre Lercheの魅力を生かした楽曲が『Heartbeat Radio』には多く収録されており、従来のSondre Lercheサウンドを更に推し進めた様な進化を見せています。どんなジャンルにトライしようともSondre Lercheの音楽には透明感を感じさせるものが多いし、Sondre Lercheの魅力を最大限に生かす事が出来るサウンドやアレンジに立ち返ったのは成功だったのではないかと思います。
レーベルも移籍し、アメリカに拠点を移したSondre Lercheが原点に戻ったかの様なサウンドを作り上げたのは、やはり色々なものをリセットする意味合いもあったのではないかと思うし、結果的には新たなスタートを切る事に成功した作品に仕上がったと思います。プロデュースは同郷のMatias Tellezも手掛けたKato Adlandとの共同プロでュースで、ミックスはThe White StripesU2The Shinsなどの錚々たる面子をプロデュースしてきたJoe Chicarelli。特質すべきはSean O'Hagan High Llamas)がストリングスのアレンジを手掛けている事で、『Heartbeat Radio』の中で重要なファクターになっていますので、興味のある方はぜひどうぞ。

Heartbeat Radio

Heartbeat Radio

見た目も透明感のあるSondre Lerche

2009年を代表する歌姫のRegina Spektorとの素敵なデュエットもどうぞ。