Beatlesの『Abbey Road』Stereoリマスター盤の雑感

ご存知の通りAbbey RoadBeatlesとして最後に録音されたアルバム。しかし実際の発売は『Let It Be』よりも前。その辺の経緯の話は割愛。
Abbey Roadに関してはポール主導のアルバムとして知られていますし、完成度という点で評価の高いアルバムだと思いますが、最初に聞いたときはそれ程ピンとはきませんでした。特に後半のメドレーの部分は感心はしたものの感動はしなかったように思います。これは後半部のメドレーの評判の高さを前情報として入れすぎたというのもあるかも知れません。その反動なのか、むしろ印象に残ったのはアナログのA面にあたる前半部(正確にいえば後半の「Here Comes The Sun」まで)で、ジョージの貢献はいうまでもないですが、4人其々の見せ場があってBeatlesらしいのは前半だなという印象を受けたのを覚えています。リマスター盤を聞きなおしてもその印象はあるのですが、メドレー部の印象は大分違うものになってきたように思います。後半のメドレー部に関してはポールの独壇場という印象を強く持っていたのですが、各楽器やコーラスなどがクリアに聞こえてくる事で、メンバーの各々が最後の力を振り絞って才能をぶつけている様子が浮かんでくるようになりました。Abbey Roadはメンバー個々の主張がはっきりとする事で、確かに最盛期のBeatlesの様な混じりあったコーラスワークが薄れてしまっているし、掛け算での魔法は消えかけているかもしれないのですが、単純にぶっちぎりの足し算で傑作を作り上げているのがBeatlesBeatlesたる所以という事でしょう。
ジョンのパートである「Sun King」から「Polythene Pam」までも当時はさほど印象に残ってなかったのですが、今聞くと非常にジョンらしさが滲む楽曲だと感じましたし、「The End」(から「Her Majesty」)で終わるエンディングも、たとえそれがBeatlesを終わらせる為の予定調和的な形式美だったとしても、やはり必要不可欠なものだったのだと思います。Abbey Road『Let It Be』の両方がBeatlesのエンディングとして機能しているのは確かだろうし、サウンド的には対極的な2枚とはいえ、どちらもBeatlesの到達点になっていると思うので、個人的には二卵性双生児の様なものだと解釈しています。聞く時は思わず2枚通して聞いてしまうのもきっとそれがあるからでしょう。
という事で オリジナル作品の雑感は一応これで終了です。時間が掛かった様な気がしてましたが、終わってみればあっという間でもあり、また寂しくもありますね。やっぱり。実際にBeatlesの音源が録音された期間は1963年〜69年の間なので、Beatles自体が物凄いスピードでAbbey Roadまで辿り着いているわけで、順を追って聞いていく事で濃密な時間の中で作品を作り続けていた事とそのスピードを改めて感じる事が出来ると思います。あとは『Past Masters』をちょっとだけ書くかも。

ABBEY ROAD

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