Beatlesの『Let It Be』Stereoリマスター盤の雑感

ご存知の通り『Let It Be』Beatlesのラストアルバム。しかし実際のレコーディングはAbbey Roadよりも前。その辺の経緯の話は割愛。
聞いた当初はAbbey Roadより『Let It Be』の方が好きで良く聞いていた印象があります。The Long And Winding Roadを何度も聞いていたからっていうのもあるけど、全体的に暗くてドロドロして生々しいアルバムのトーン自体が好きでしたね。何といってもTwo Of UsI’ve Got A Feeling」の様にジョンとポールのボーカル掛け合いを楽しめるのが好きだったし、I’ve Got A Feeling」I’ve Got A Feeling!!!」ってなる瞬間(ってどの瞬間か分かりますよね?)が堪らなかったです。あと「Let It Be」は楽曲の質というよりポールのボーカルが凄いと思っていて、Beatlesの楽曲の中でのポールのボーカルでは一番の出来だと思っています。一方ジョンもボーカルを抑えたタイプの楽曲としては「Across The Universeは最高のボーカルだと思うし、その意味では二人のボーカルが聞きどころだと思います。
リマスター盤を聞いて思うのはフィル・スペクターによるプロデュースの特徴が浮き立っているところで、ポールがフィル・スペクターのオーバープロデュースと批判した事、逆にジョンとジョージが指示した事の両方の意味が見えてくる気がします。確かな事は、フィル・スペクターのプロデュースが『Let It Be』に収録されて楽曲にはマッチしていたという事で、結果として『Let It Be』に収録された楽曲はポピュラーミュージックの歴史に残る楽曲になっていますし、フィル・スペクターが構築した方法論は後世に大きな影響を与えており、このプロデュースは多くの人に受け入れられるといえると思います。
だからジョンとジョージがフィル・スペクターを支持した気持ちは非常に冷静な判断として理解出来るし、一方でBeatlesの原点であるライブ演奏にこだわったポールが難色を示すのも当然の事ではあると思います。『Let It Be』(正確には『Get Back』)を途中で投げ出してしまった無念があるポールにしてみれば、冷静な判断は下せないだろうし、嫉妬に近い気持ちもあるにせよ、自分が目指したサウンド『Let It Be』フィル・スペクターが構築したものとは違ったのは確かだと思います。その後ポールがAbbey Roadで目指したサウンドは、また違うものである事からも分かる通り、ポールの中では『Get Back』は未だに未完の作品だし、『Let It Be... Naked』が発売されたとはいえ(実際のミックス作業にポール自身はほとんど関与してないわけで)、その思いと現実とのギャップでのジレンマは生涯続くのだと思います。おっと話が逸れましたね。
あと、リマスターによって感じたのは「For You Blue」でのジョンのスティール・ギターが印象的に聞こえるのと(ジョージの曲でジョンのギターってあまり印象にないんで珍しい)、同じくジョンのリードギターが鳴り響く「Get Back」でのギターの印象が大きくなっている事。アルバムの発売順においてはこの2曲でBeatlesはエンディングを迎えるという事になり、ジョンとポールの協演という意味ではこの終わり方もありなのかと思い直しました。
という事で次回はいよいよAbbey Roadですね。

LET IT BE-STEREO REMAS

LET IT BE-STEREO REMAS

Let It Be... Naked [Bonus Disc]

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