The Wildheartsが『Chutzpah!』で目まぐるしく変化しながら示したバンドの状態

The Wildheartsの新作『Chutzpah!』を目まぐるしくご紹介です。
Wildheartsの新作『Chutzpah!』はオリジナルとしては2007年のThe Wildhearts以来ですが、昨年もカバーアルバムである『Stop Us If You've Heard This One Before, Vol 1.』が発売されていますし、中心人物のGingerは2007年、2008年と立て続けにソロアルバムを出していますから、近年は恐ろしいほどのリリースペースになっています。恐らくこのペースはRobert Pollardに匹敵する勢いかと。
『Chutzpah!』を聞いてまず思ったのが、作風がGingerのソロアルバムに近づいてきたという事。前作The WildheartsはソロでのGingerの作品とは差別化が図られており、長尺の大作風の楽曲がありながらもWildheartsサウンドの流れを継承した部分も感じられたのですが、今作『Chutzpah!』は更に制限無く好き勝手にやっている印象です。パワーポップだったりハードコアだったり、様々なサウンドの要素が目まぐるしく展開していくのですが、Wildheartsの持ち味であるキャッチーなメロディはそのままなので、サウンド的にはごった煮な内容なのに違和感は全くありません。「You Are Proof That Not All Women Are Insane」という楽曲(最後に「Are You Sleeping」[ぐーちょきぱーの歌]のフレーズも飛び込んでくる)が一番従来のWildheartsサウンドに近くてファンは喜びそうですが、ライナーノーツによればGingerは収録したくなかった様で、どこまでも変化と向上を求めている探求的な姿勢には賛同出来ます。『Chutzpah!』はメンバーのScott Sorryの貢献度も高いようで、Gingerのソロ作品には無い要素が加わる事で、Wildheartsのバンドとしてのバランスも保てているのだと思いますし、WildheartsGinger中心のバンドである事は間違いなのですが、決してワンマンバンドになっていないのは非常に良い状態だと思います。『Chutzpah!』を聞く限り、一時期の停滞期の様に作品が出ない時期が続く事は考え難いので、その辺も喜ばしいところ。
国内盤にはボ−ナストラックが4曲収録で全14曲収録なのですが、その収録箇所が変わっていて、1曲目と10〜12曲目に収録されています。その理由はTHE WiLDHEARTS with FRiENDS "WILL YOU PLEASE WELCOME""にも記載してあるのですが、「Chutzpah jnr」で始まり「Chutzpah」で終わる流れを崩さなかったのは正解だと思います(というか「Chutzpah jnr」を外す理由が無い。10〜12曲に関しては賛否があると思いますが、自殺した友人に向けられた「Zeen Requiem」は感動的)。ボーナストラックもさることながらメンバーの解説と対訳が付いているので国内盤がお勧め。

フツパー

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