The Enemyの『Music For The People』がプレスに叩かれる理由

The Enemyといえばファーストアルバム『We'll Live and Die in these Towns』がUKのプレスにも概ね好評で、新たなワーキングクラスのヒーローとして認知されていたと思うのですが、セカンドアルバムMusic For The Peopleの発表で風向きが変わったようです。いつもの事といえばいつもの事なのですがNMEでは手のひらを返したかのようにバッシング気味の論調で、アルバム自体は初登場を2位(1位はBob Dylanの新作『Together Through Life』、新作効果で前作『We'll Live And Die In These Towns』も65位に再チャートインしている )を記録しセールス的には成功といえる状況にも関わらず、両極端な評価になっている様で、The Enemyの活動は決して順風満帆という訳では無い様です。
サウンド面でいえばファーストアルバムにあったThe Jam直系の性急でパンキッシュな楽曲が鳴りを潜め、重厚で壮大な楽曲が大部分を占めており、ストリングスや女性コーラスを積極的に取り入れる事で、サウンド面での変化を印象付けています。今作でThe Enemyはスタジアムバンドとしては完全に確立したと思うのですが、アンセム的な存在感を放つ反面、アンセムとなる楽曲が今作Music For The Peopleには少々欠けており、バンドが一気に飛躍しようとし過ぎた印象は受けます。過去のバンドからのサウンド面での影響の受け方やメンタリティからして、どうしてもoasisをイメージするのですが、oasis『(What's the Story) Morning Glory?』で圧倒的な成功を収めたのに比べると、The Enemyoasisでいえば『Be Here Now』に近いものを作り出してしまった感があります。このMusic For The PeopleにはThe JamThe WhoThe ClashLed ZeppelinPulpと様々なUKバンドのサウンドやメロディが目まぐるしく顔を覗かせますが(XTCまで引っ張り出してきていたのには驚いたけど)、個人的にはBruce Springsteenを思わせる様なソングライティングが冴えているミドルテンポの「Sing When You're in Love」サウンド的にはWhoですけど)やまるでThe Verveの様な「Last Goodbye」などで、新しいバンド像も十分に表現出来ていると思うのですが、前作『We'll Live and Die in these Towns』で見せた圧倒的なメロディが若干影を潜めている点だけが残念なところ。
オリジナル曲の歌詞からはもちろんの事、日本盤に収録のカバー曲のチョイス(「A New England」「Hey Hey, My My (Into The Black)」)を考えても英国とロックンロールを背負っていく気骨は感じますし、若者の代弁者としての役割を引き受けようとするその姿勢は評価されるべきだと思いますが、もう少し肩の力が抜けても良いのかなと感じます。冒頭にThe Enemyの活動は決して順風満帆という訳では無いと書きましたが、その辺を乗り越えれる力はあるだろうし、逆境があってこそのロックンロールバンドでしょうからむしろ本望なのだと思います。The Enemy自体にはメロディを書く能力はあるだけにその能力をもっと上手く機能させる事が出来れば、論評を超える圧倒的な支持を得る事が出来るのではないでしょうか。

ボーナストラックと価格を考えれば今作は国内盤がお得。

The Enemy - No Time For Tears