Nick Loweのベスト盤『Quiet Please... The New Best of Nick Lowe』の大充実な内容

Nick Loweのベスト盤『Quiet Please... The New Best of Nick Loweが三枚組というボリュームと決定盤的な内容で発売されたのでご紹介。

Nick Loweといえば、日本ではやっぱり「Cruel to Be Kind」が有名で曲単位のイメージが強いアーティストなんだと思いますが、これはオリジナルアルバムに関しては廃盤になっているものが多くて(国内盤もあまり流通していない様ですし)、アルバム単位で語られる事が少ない為であって、しかも良曲を連発しても、様々なバンド活動や楽曲提供、プロデュース業と活動が多岐に渡っておりソロアーティストとしてのイメージが付き難かったのが原因になっていると思います。近年、ようやくアルバムも再発されつつある状態なのですが、今回のこのベスト盤が決定的な入門盤になっているのでまずは大推薦したいと思います。
CD二枚組全49曲というボリュームもさることながらBrinsley Schwarz、Rockpile、Little Village時代の楽曲も含まれている為、正にアンソロジー的な内容になっていますし、何といっても今作の目玉はDVDの映像集でNick Loweは公式な映像作品が皆無な状況なわけですから、これは本当に貴重な内容で、2007年のベルギーでのフルライブ(17曲)や初期のPV集(9曲)と大充実の内容なので資金に余裕がある方には三枚組をお薦めしておきます。今回収録のライブでは序盤がアコースティックなセットで徐々に上がっていく感じなんですが、御大は見た目こそ老人化しているものの、その艶のある声は輝きが失せず健在などころか益々柔らかで魅力的で、リラックスしたムードのライブを楽しむ事が出来ます。PVの方は時代を感じさせるチープなものですがNick Loweの男前っぷりを楽しめる貴重な映像になっていますし、Rockpileの演奏が楽しめるのはもちろんCarlene Carter(元妻)との仲睦まじい姿も収録されており、こちらも貴重かと思います。
CDの内容にも少し触れておきますと、一枚目のディスクが初期から中期、所謂パブロック期として語られる時代の楽曲が中心で、大名曲の「(What's So Funny 'Bout) Peace, Love, and Understanding」「When I Write The Book」(この曲のアンサーソング「Everyday I Write The Book」by Elvis Costello)はもちろんの事、「Heart」のレゲエバージョンも収録されています。二枚目のディスクは近年のNick Loweの作品からのセレクトで、グッと落ち着きのある内容でどちらかといえばNick Lowe流のルーツミュージックだといえると思います。


Quiet Please: The New Best of Nick Lowe (W/Dvd)

Quiet Please: The New Best of Nick Lowe (W/Dvd)

ライナーをどこかで見た事があると思ったらBrinsley Schwarzのベスト盤のジャケットのパロディなんですね。『The New Best of Nick Loweのタイトルは『The New Favourites of Brinsley Schwarz』からとっているって訳だ。いわゆるパブロック周辺のアーティストって楽曲の提供やカバーとか色々と横の繋がりがあって、上手く循環してて遊び心がありますよね。遊び心といえば久保憲司氏も述べられている通りNick Loweってパロディであったりユーモアのセンスも抜群なんですよね。プロデューサーとしても名を馳せた人(というかプロデューサー業での功績が物凄い)で頑固な職人気質もあるはずなのに、いつまでも茶目っ気を忘れていないところもNick Loweの大きな魅力なのだと思います。

Nick Lowe - Whats So Funny About Peace Love & Understanding