1990sのセカンドアルバム『Kicks』が重たくなり過ぎない理由

1990sのセカンドアルバム『Kicks』の音触りがどこかで聞いた事があったのでご紹介。

結果からいえば、どこかで聞いた事がある感じだったのはBernard Butlerがプロデュースしていたからで、「1990s、お前もか」とは思ったものの、これも好プロデュースになっています。1990sといえば来日直前にベースが脱退し、日本では田中貴氏がサポートで加入したり、本国ではNorman Blakeがサポートしてたりと、決してバンドの状態は良くなかったはずなのですが、そこは元The Yummy FurFranz FerdinandAlex KapranosPaul Thomsonも在籍していたバンド)。経験と技術で乗り切り無事にセカンドアルバムを完成させています。一聴して分かるのは前作『Cookies』よりガレージ色が薄くなっている事で、サウンド自体は強度が上がり若干ハードでグラマラスな印象を受けます。しかし、特有の軽快さやポップな部分というのは失われておらず(『Cookies』に収録の「See You At The Lights」の様な突き抜けてポップな曲はないものの)、この辺はBernard Butlerが良い仕事をしたという事でしょう。同じくBernard ButlerがプロデュースしたCut Off Your Handsと何となく重なる部分もあるのですが、1990sの方がそのキャリアの分だけ当然のようにカッチリとしたサウンドを作り出しており、それと同時に瑞々しさは薄れているものの、Cut Off Your Handsのアルバム『You & I』共々、Bernard Butlerのバランス感覚の良さが上手く機能した作品だといえるでしょう(参照Cut Off Your Handsレビュー)。
『Kicks』は、ロンドンにあるEdwyn CollinsのWest Heath Yardスタジオでレコーディングされた事もあり、随所にネオアコ的な旋律やお得意のコーラスワークも見られ、この辺が特有の軽さを維持出来ている要因になっていると思います。また、「Kickstrasse」という曲には解散してしまったThe Long BlondesKate Jacksonが参加しており、『Kicks』という作品の中でもアクセントになっています。ちなみにKate JacksonのソロアルバムのプロデュースもBernard Butlerの様で、これも今年中に発売されるでしょうから、今年もBernard Butlerのプロデュース業バブルは弾ける様子が全く見られません。

Kicks

Kicks

1990's - 59