John Wesley Hardingの『Who Was Changed and Who Was Dead』の爽快な内容とライブ権の販売

John Wesley HardingといえばBob Dylanのアルバムを連想する人も多いと思うのですが、今回ご紹介するのはシンガーソングライターJohn Wesley Hardingの最新アルバム『Who Was Changed and Who Was Dead』。John Wesley Hardingはデビュー当時にはElvis Costelloにそっくりのボーカルという事で日本でも話題になったと思うのですが、今ではその修辞句が必要無いくらいの作品数を発表し、シンガーソングライターとしての地位を確立しています。デビュー当時はパワーポップ的な括りで紹介されていたJohn Wesley Hardingも、その後はフォークやトラッドに接近した作品を発表するなど音楽の幅を広げていたのですが、今作『Who Was Changed and Who Was Dead』には爽快なロックンロール、つまり初期のJohn Wesley Hardingを思わせるパワーポップ的な曲も多く収録されており、まさにそのキャリアの集大成的な内容となっています。『Who Was Changed and Who Was Dead』がポップな作品になった要因としてまず挙げられるのがMike Violaの参加で、三曲でJohn Wesley Hardingと共作しており、そのどれもがポップな仕上がりになっており、アルバムの中で大きな存在感を放っています(もちろんMike Violaはコーラスでも参加しており、楽曲に彩りを加えている)。他にも今作はThe Minus 5が全面的に参加という事で盟友Scott McCaugheyR.E.M.Peter Buckも参加しており、Minus 5繋がりで参加したであろうKelly Hoganのコーラスも響き合う弦楽器と共鳴する様なハーモニーで、今作の一つのハイライトにもなっています。
Beatles「While My Guitar Gently Weeps」を喚起させる「My Favourite Angel」でアルバムは幕が開き(ちなみに「Top of the Bottom」という曲はカントリーフォーク調だけどまるで「Help」みたいな言葉の乗せ方)、アップテンポな曲とバラードがバランス良く繰り出され、その中でアクセントとしてトラッド・フォークな要素が上手く機能しています。最近ではフォークのイメージも強くなっていたJohn Wesley Hardingですが今作に関しては完全なロックアルバムでBeatlesに回帰した作品だと言えると思います。
ボーカル面で書かせてもらうと、やっぱりJohn Wesley Hardingの声はElvis Costelloに似ている為(特に今作収録のバラード群は)、これがElvis Costelloの新作だと言い張れば、一部のファンは信じて狂喜乱舞するのではないかとすら思えます。それ程『Who Was Changed and Who Was Dead』は素晴らしく充実した一枚だし、豪華なゲスト陣の参加や前座を使わない事で知られるBruce SpringsteenJohn Wesley Hardingを抜擢したというエピソードや数多くの大物ミュージシャンとの共演歴からも、John Wesley Hardingはミュージシャンズミュージシャンのイメージもあり、この日本では知名度がイマイチ上がってきていないのですが、そんな過小評価を覆す決定的な快心作になっていると思います。


Who Was Changed & Who Was Dead (Bonus CD)

Who Was Changed & Who Was Dead (Bonus CD)

今回自分が購入したCDには素晴らしい内容のライブ盤が付属していたのですが、他にもダウンロードでの販売はもちろんの事、TシャツやDVD、サインの入ったアートワークがあったりと様々な関連商品を取り揃えている『Who Was Changed and Who Was Dead』にはある意味究極の付加価値が販売されていて、これが何とJohn Wesley Hardingのライブ権というもので(ハンマープライスみたい)、5000ドルで購入者の為に演奏をしてくれるそうです(もちろん、様々な関連商品も手に入れることが出来る)。交通費さえ払えば日本にも来てくれるのではないでしょうか。


初期の二枚の作品がコンパイルされたこちら

Here Comes the Groom: Name Above the Title

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余裕があればトラッドフォークの色が出た名盤のこちらも
John Wesley Harding's New Deal

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彼はWesley Stace名義での小説家としても評価が高い
By George

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