A.C. Newmanの『Get Guilty』はパワーポップ×哀愁の良い流れ

2007年に発売された『Challengers』のジャケットが気持ち悪い事で有名なカナダのNew Pornographersの中心メンバーであるA.C. Newman(Allan Carl Newman)の、セカンドソロアルバム『Get Guilty』が到着したのでご紹介。
前作『The Slow Wonder』も歌心に溢れた良作だったのですが、今作は更にポップ度が増しており、A.C. Newmanのキャリアの中でも最高の仕事の一つになりそうです。目立つのは女性コーラスとストリングスで、パワーポップを下敷きにしながらもNew Pornographersとは異なる表現の幅と繊細さを聞かせてくれています。ちなみにコーラスで参加しているのはNicole Atkins(彼女はFeist「1 2 3 4」でもバックコーラスを務めるなど、カナダの音楽シーンと縁が深い)や、Mates of StateJason HammelKori GardnerでバイオリンはNew Pornographersの作品にも参加しているTara Szczygielski。そしてSuperchunk/Mountain GoatsJon Wursterがドラムで参加している。
個々の楽曲に耳を移すと、最初の一音からドラマティックな、オープニングを飾る「There Are Maybe Ten or Twelve」、一番パワーポップな匂いが残る「The Heartbreak Rides」、ギターのカッティングとコーラスが気持ち良い「Like a Hitman, Like a Dancer」Donald Barthelmeの小説から名付けられた飛び抜けてポップな「The Palace At 4 A.M.」、じっくりと聞かせるスケール感を持った「The Changeling」などが耳に残り、個性を持ちながらもアルバムに嵌っている楽曲群が、アルバム全体の雰囲気を壊さずに並んでいます。
A.C. Newmanは1968年生まれですので40代に突入しているわけですが、今作『Get Guilty』でソロアーティストとしての自我を完全に手に入れたのではないかと思います。New Pornographersでの所謂パワーポップサウンド(New Pornographersのサウンド自体は典型的なパワーポップサウンドとは一線を画すものではあるけれど)に、哀愁や憂いを帯びた薄いサイケデリックサウンドを加える事で独特の魅力を持った『Get Guilty』の楽曲群のクオリティは高いし、今後もソロアーティストとしての作品を作り続けて欲しいものです。
そして今回のソロ活動が、もはや名門Matador Recordsの顔とも言えるほどの存在にまでになったNew Pornographersの新作にも良い流れで繋がるのではないかと思います。

Challengers

Challengers

それにしても円高バンザイな価格が続いており、CDが買い求めやすい。

Get Guilty (Dig)

Get Guilty (Dig)

A.C. Newman - Like a Hitman, Like a Dancer