TV on the Radioが『Dear Science』で見せた頭でっかちにならないポップさ
TV on the Radioといえばやたらと評論家受けが良いのですが、どこか取り付き難い印象があって、少々過大評価気味なのかなと思っていたのですが今作『Dear Science』はそのギャップを全く感じさせないほどコマーシャルな作品になっていたのでご紹介。これは多くの人の耳に届くのではないでしょうか。
TV on the Radioを語る上では中心人物であるDavid Andrew Sitekの話題は避けられないのですが、彼がNMEのThe Future 50という企画(今後の音楽業界での期待の50人だとかそんな感じ)でRadiohead、M.I.A.、Damon Albarn、Alex Turnerを抑えて1位に輝いたり、女優Scarlett Johanssonのアルバム『Anywhere I Lay My Head』やFoalsのデビューアルバム『Antidotes』をプロデュースした事で否が応でもTV on the Radio自体にも注目が集まり、新作への期待も異様に高まっていたのだと思います(ちなみにMassive Attackの新作のプロデュースもDavid Andrew Sitekで話題になっている)。
そして完成した『Dear Science』は様々なジャンルの要素を上手くミックスしバランス良く仕上がっているのですが、従来のTV on the Radioから比べるとかなり開放的でポップなメロディで全編が占められています。いきなり意表をつくコーラスワークを聞かせる「Halfway Home」から幕を開けて、その後もジャズからゴスペルの要素をベースにしながら、ラップからエレクトロまで縦横無尽に駆け巡っており、ボーカルTunde Adebimpe(トゥンデ・アデビンペって読み難いな)のファンキーなファルセットも冴えていると思います。まあこのバンドが辛うじて嫌らしくならないのはボーカルのTunde Adebimpeの存在感に依るところが大きいと思うので、今作はある意味彼の面目躍如といったところでしょうか。音の感触はDavid Andrew SitekがプロデュースしたFoalsとの共通点も見られ、彼のプロデュースでFoalsに大きな変化をもたらしたのか、それともFoalsの影響を彼が受けたのかは定かではないですが、頭でっかちにならない適度なポップさはFoalsに通ずるものがあるし、今作においては良い影響を受けていると思います。そして彼らが「ダンス・レコード」を意識してこの『Dear Science』を作ったのだとしたら少なくともその試みは成功しているし、大きく裾野を広げた一枚という事になると思います。
自分はUS盤を買ったのですが今なら(10/19現在)ボーナストラック入りのUK盤の方が安いです。国内盤も安いので買うならUS盤か国内盤を。
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