Vinesの新作『Melodia』がようやく手元に届いたので感想を
シングル曲のみが強烈に印象に残ったファーストとセカンドに比べて、アルバムの出来で言えば遥かに良作となったサードアルバム『Vision Valley』を経てなければ今作『Melodia』にも全く期待はしなかったのだけど、バンドとして困難な時期に『Vision Valley』を完成させた事により、ひと皮剥けたのではないかと感じられる集大成的な作品になっていた。
正直なところ、前作の聴きどころでもあり新機軸でもあったグルーヴやドライブ感は希薄になってしまっている。これは前作ではベースが不在だった為、You Am IのAndy Kentがサポートしていたというのもあるし、プロデューサーがWayne Connollyから1st、2stのプロデューサーであるRob Schnapfに戻った事が大きく影響している。そして、前作のセールス的な失敗によって、求められているVines像に囚われてしまっている部分もある。しかし、前作で大幅に向上したCraig Nichollsのソングライティングの能力自体に進歩と安定が見られる為、それらのマイナス部分を補うだけのアルバムの流れと一体感がこのアルバムには確かにある。
『Vision Valley』も収録時間が短いアルバムだったけど、今作『Melodia』も14曲入りで32:42なので曲単位で考えても相当短い。成長を見せようとするあまりに大風呂敷を広げてしまい、挙句に能力が追いつかないバンドも多い中、基本的に一つのアイデアのみで勝負し前作同様に最大限に無駄な部分を削ぎ落としている点は彼らの一番の武器だと思うし、その事が曲単位では希薄になったグルーブをアルバム全体で補完出来ている要因になっているので、アルバム単位でも気持ち良く聞くことが出来る。
今作『Melodia』は海外での評価も決して高いものになっていないし、前作同様セールスも振るわないかもしれない。ただCraig Nichollsにロックの救世主的なものを勝手に求めたのはメディアの方だし、恐らく原点回帰したけど期待以上のものではなかったという流れで語られる事も多いのだと思うけどそれは違う(特に原点回帰とか初期衝動とかNirvanaとかBeatlesとか名前が挙がるようなレビューは読んでも時間の無駄じゃないかな)。
『Melodia』はCraig Nichollsがもがいて乗り越えて掴んだひとつ形だし、初めて一人のロッカーとして自我を確立出来た記念碑的な作品になるかもしれない。その点をもっともっと評価されても良いのではないだろうかと思う。
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Vines「He's a Rocker」